（P９)
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Ｓｉｄｅ Ｂ 十一
いざという時の補助にと、発動待機状態の土の札を残して、
デュオンさんがソウルイーターの内に意識を移してから、しばらく経った。
既に夜の帳が降り、月明かりがその横顔を照らしている。
特にすることもなく、ジョウイと時折会話しながら待機している。
特に会話しなくても気詰まりじゃないのは確かで、静けさと共に時間は過ぎていく。
パリッ……！
「！！」
ふいにデュオンさんの右手に闇の気配。
僕等は臨戦態勢になる。
黒い闇が一瞬スパークしたが、それは一度だけで、やがて元の静けさを取り戻した。
「収まった……か？」
「……！」
だが、紋章を押さえようと、思わず触れた彼の手は、酷く、冷たかった。
……手、だけじゃない。
「デュオンさん……体温が酷く下がってる……！」
「――え？」
ジョウイも膝を落とし、その腕に触れる。
「――本当だ。紋章の影響なのか？」
僕はデュオンさんの右手に自分の右手を置いた。
盾の魔法が僕達を包む。
「デュオンさん……！」
ソウルイーターの内側に在る、彼に届くように。
「…………」
「――少し、体温が戻ってるみたいだ」
ジョウイの言う通り、冷たさが和らいでいた。
そして……やがてデュオンさんが眼を開いた。
Ｓｉｄｅ Ｂ 十二
――眼を開くと、二人が覗き込んでいた。
「何か、あったか？」
思わず、訊ねた。
「いえ……こちらに大した影響はありませんでしたが……」
やや固い口調でジョウイが言う。
「デュオンさん、さっきまで、酷く冷たかった……」
――多分、闇に触れていた所為だろう。
「……それで、呼んでくれていたのか」
「――聞こえましたか？」
「ああ」
リアンにうなずいて、立ち上がる。
「とりあえず、成功だよ。この紋章は……法の支配する世界を望んではいなかった」
「そうですか……」
リアンの声に、ほっとした風な響きが入った。
「今日は、これで戻るよ」
「大丈夫ですか」
「ああ、おかげでね」
――二人と別れ、外に出ると、ひやりとした外気が身を包んだ。
夜空の中、身にまとう闇を感じる。
今なら。
紋章と自分との関係で迷わない今なら、訊けるだろうか。
十五年前保留にしていた、あの問いを――。