（P１２)
設定破り目次へ 小説目次へ 前のページへ トップページへ戻る
Ｓｉｄｅ Ｂ 十六
深い闇の中、声だけが聞こえる。
「――テッド、自分を人間じゃないって思うこと、あったか？ 紋章の……器だと」
「……ああ、あるぜ」
戻って来た声は、普段の彼よりも酷く大人びた、苦さを秘めた低めのトーンで。
身が、引き締まる思いがする。
「そうか……僕達に、変えられるかな。
生まれだけの所為でも、紋章だけの所為でもないと思うんだ。――そう、思うのは」
彼は真面目な声のまま、
「世界に見捨てられた存在の孤独、か。世界を敵と思う程、誰も在ないなら、誰しも有り得る道かも知れないな。
だが……変えられる、筈だ。――お前なら、出来ると思う」
「……テッド……」
その言葉に、胸の奥が温かくなる。
「――俺にも出来ることがあればいいんだけどな、――お前等の為に」
「出来る筈だよ。テッドにしか解らない……気付けないことがあると思う」
「だといいな。俺にも……」
語尾はゆっくりと闇に溶けた。
「……テッド？」
――――気が付くと、朝の日差しが明るい宿の部屋で、目を醒ました自分が在た。
――夢か？ それとも……。
思わず右手の紋章に視線を落とす。
「――行こう」
久し振りに、朝に行動を開始する。
行き先は――――。
Ｓｉｄｅ Ｂ 十七
「マクドールさん、おはようございます」
「デュオンさん、はやいですね、今日は」
ジョウイとリアン。二人が出迎えた。
「ああ、君達と動くなら、この方がいい」
「何か、あったんですか？」
期待と強さを含む瞳でリアンが訊く。
地図を開いて、二人に示す。
「この場所へ行く。……実際、何があるかは解らないが、何を見ることになっても、一緒に来るか？」
重さを含んだ眼差しを二人に向ける。
「――ええ。このままでは気になりますし」
「行きます、もちろん」
二人ともうなずく。
ジョウイは、ばさりとフードの付いたマントを広げた。
「万一、昔の知り合いに会うと困りますから」
「フォローするさ、行こう」