仲間と呼ぶ存在（もの）
水上砦シャサラザードで、ソニア・シューレンと戦った。
「何故テオ様を裏切った？ 乱を起こし、戦を起こし、人々の命を……それが、あなたの正義なのか？」
その答えを返す前に、水上砦シャサラザードは炎に包まれた。予定よりはやすぎる！
ビクトールの機転もあって、僕達はソニアを連れてシャサラザードを脱出した。
砦を出ると、マッシュが倒れていた。
帝国のスパイは、旧解放軍からの仲間、サンチェスだったのだ。
それを知ったフリックは激怒した。
「アジトが襲われ、オデッサが……オデッサが死んだのも貴様のせいなのか！」
「そうです。ただ、覚えておいて下さい。私は……皆さん達が好きでした」
「俺は……お前を許しはしない！」
サンチェスを斬ろうとするフリックを止めたのは他ならぬマッシュだった。
今サンチェスを斬れば、帝国のスパイであったことが解り、解放軍全軍の士気に関わってしまうと。
リュウカンの進言で、僕達は一度本拠地に戻った。
マッシュのことは心配だったけれど……覚悟を決めた彼を止めることは誰にも出来なかった。
仲間と呼ぶ存在（もの）
僕は牢の中にいるソニアに、恨んでもいいから仲間になってくれと頼んだ。
「ふん、よかろう。貴様と一緒にいて、貴様の死にザマを見てやる」
そう言ってソニアは仲間になった。
「弱いな、僕も……」
ソニアを仲間にしたのには、僕だけの理由があった。
僕は、僕を憎み続けてくれる存在が欲しかった。勿論、リーダーとして死ぬ訳には行かなかったけれど。勝利を望む仲間達の中で、家族を殺した僕を赦さない存在が欲しかったんだ。
だからあえて危険を承知でソニアを仲間にしたんだ。
これは僕の我が儘で――だから僕だけの秘密だ。