仲間と呼ぶ存在（もの）
本拠地に帰ると、大将軍カシム・ハジルにウォーレンとビクトールが捕まったとの情報が入った。
おまけにマッシュの話によると、解放軍にスパイがいるらしい。
僕はマッシュを信頼して、翌日の指揮権全てを委ねることにした。
マッシュの機転で、敵に奇襲をかけ、さらにモラビア城内へと進入、ビクトール達の所へ。
ついでに北のジョウストン都市同盟も利用して、無血開城を実現した。
「遅いぞぉデュオン。待ちくたびれたぞぉ」
牢屋にたどり着いた時のビクトールの第一声がそれだった。
「……帰ろうか、皆」
僕は牢に背を向けた。
「お、おい待て！ 冗談だ冗談！」
慌てた様子のビクトールの言葉に、苦笑しながら足を止めて振り返る。
「……冗談だよ、こっちも。さ、帰ろうか皆で」
ミルイヒの説得で、カシム・ハジルが仲間になり、僕達は一度本拠地に引き返した。
屋上で、はぐれエルフだったルビィがつぶやいた。
「仲間……というのもいいものかもな……」
「……ああ、そうだな……」
隣に並んで風に吹かれながら、辺りを見渡す。
大分本拠地も賑やかになっていた。
その頃にはフッチも、やや固い口調ながらも、普通に話してくれるようになっていた。
そして決戦も近い。
マッシュの進言により、次はクワバの要塞ではなく、水上砦シャサラザードを攻めることになっていた。
夜。
僕はマッシュとハンフリーが話しているのを聞いてしまった。
カレッカの悲劇の真相を。
カレッカの村を焼き払い、村人達を虐殺したのはジョウストン都市同盟ではなく、自分達帝国部隊だったことを。
そのお陰で帝国軍は結果的にジョウストン都市同盟の軍を押し返せ、被害も最小限に食い止められたであろうこと。
真実を知ったハンフリーは怒りにまかせて隊長を斬り、帝国を離れた……。
戦争の裏側の血塗られた真実。
僕は何となくやり切れない気持ちで部屋へと戻った。