(P5)

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　だから僕達は、その立場が逆になることなんて、考えてなかった――。


　それはもしかしたら僕だけで、デュオンさんはどこか気付いていて、気づいてなかったのは僕だけだったのかも知れないけど。
　それでも僕は――なくすことなんか考えたくなかったんだ。
　それは僕の弱さだと、そう思うのだけど。
　自分以上に大事なものをなくして、自分さえなくしかけてた時に、支えてくれた人達を失うことなんて――。
　考えたく、なかった。


「グラスランドに……ハルモニアの神官将か……」
　報告書を見ながら、デュオンさんが渋い表情を見せる。
　渋い、と言うより……どこか辛そうな眼を。
　そう、僕にも解る。この感じは……。
「デュオンさん、行きましょう。ここはシュウさんに任せて」
「……しかし」
　デュオンさんは僕達がこの国を留守にすることに、少しためらう様子を見せた。
「お願いします、きっと必要だと思うから」　
　そう頼み込むと、デュオンさんは僅かに考える間の後、うなずいた。

「……そうだな、行こう」
　そして僅かに迷いを振り切るように立ち上がる。
　こうして僕達は、グラスランドに向かった。


　紋章の気配で探し回り、戦火の村でルックを見つけた。
　髪を切り、見慣れたローブ姿ではなく、緑と茶を基調にした動きやすそうなズボン姿だったけど、直ぐにルックだと解った。
　デュオンさんが珍しく感情をあらわにして、ルックに半ば叫ぶように問いかける。
「僕たちがそうなったら止めてくれるんじゃなかったのか！？」

　だがルックは淡々とした口調で、僕達を拒絶する言葉を紡ぐ。ただその瞳だけは奇妙に辺りの炎が照り映えて、揺らいで見えた。

「……そのことは済まないと思っているよ。けれど僕はもう……戻らない」
　その言葉だけ残し、引き止めようとした僕達の手が届く前にルックの姿は風と共に消えた。
「ルッ……！」
　僕達はどこか割り切れない想いでそれを見送るしかなかった……。

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