Ｐ４ 前のページへ 小説目次２へ 幻想水滸伝関連目次に戻る トップページへ戻る
しかし、完全隔離状態と言うことか？ 何故だ？
祖先が戦に負けでもしたのか、それとも……。
「人を探しておると？」
「はい」
ネクロードの特徴を伝えると、長老はそっけなく首を振った。
「知らんな。人自体、訪れん場所じゃからな」
「ええ、先程、テッドにも言われました」
「このような場所に、探し人がおると思われたのか？」
「……」
僅かにためらった後、告げる。
「……探しているのは、盗人なので、街に在るとは限らないのです」
さすがに、人を襲わない為に人里を避けていたとは言えない。
「ふむ」
長老はさして驚いた様子もなく、
「訳ありのようじゃな」
「ええ」
「しかし、ここは見ての通りの場所でな。お主の求める者はおらん」
「……そのようですね」
この村自体も、〝訳あり〟に見えるのだが、訊くのはお門違いだろうか。
「夜が明けたら、街に向かうが良かろう」
「街があるんですか、近くに？」
「東の方にな。近いと言っても一週間は掛かる距離だが」
「……」
「心配せずとも、食料や水は補給して行くといい」
「――有り難うございます」
そう、この村が〝訳あり〟なのだとしても。奴が在ない以上、僕には用がない。
長老に貸し出された部屋に入ると、テッドがやって来た。
「話、終わった？」
ひょいと扉から頭を覗かせる。
取り敢えず、彼を部屋の中に招いた。
「ああ。テッドはこの家に住んでるのか？」
「うん」
「……長老の孫なのか？」
「そうだよ」
という事は、将来ここを継ぐことになると言うことか？
「来るまでに、他の子供を見なかったが……」
少し気に掛かった事を口にすると、テッドはちょっとだけ俯いた。
「うん、僕が一番年下だから」
「……」
「僕、外に行ってみたい」
「え？」
テッドの言葉に、微かに自分の中の何かが反応した。
「この村じゃなくて、違う場所に行ってみたい。それで――」
彼はためらうように、何度か口を開きかけて。
「……同い年位の、友達が欲しいんだ」
告げた言葉は、酷く年相応で、飾り気の無い、本心からの言葉に聞こえた。
「……」
「駄目かな、そういうの」
「いや、当然のことだ」
少しかがんで、彼と視線を合わせる。
「諦めなければ、恐らく機会はある」
「そうかな……な、あんたは？」
「……え？」
期待のこもった眼で、突然矛先を向けられて、少しとまどう。
「……テッドより、年上だと思うが」
「うーん、駄目かなぁ……面白そうだけどなぁ……」
何やら思案している。何となく、まずい予感が……。
「ま、いいや。それよりさ、外の話が聞きたい」
あっさりと放棄してくれたらしい。
「そうだな……」
旅の端々で見掛けた、違う街の話をすることにした。
村長の厚意で支度を調えた後、出立することにした。
だが、その時、急速に全てが動いた。
「！」
瞬間だけ走った、強く鋭い気配。
紋章――だが、〝月〟とは違う。
建物の影に身を隠し、気配の方向を覗うと、長老と対峙している、長身の女の姿があった。
見覚えのない顔だ。
だが、あれはもしや、始祖シエラと同じ……真の紋章の……。
だが直ぐに、思考を断ち切る様に、その姿は空間に消えた。
事態は良く解らないが、厄介な状態なのだろうか。
これ以上、係わらずに出て行くべきか……。