お約束。～バトン・タッチ？（Ｓｉｄｅルック）～
そして、再調査の時が来た。
彼は、記憶を取り戻すことを選んだようだった。覚悟のような眼差しを前に向けている。
だが、飛び出したデュオンを、〝それ〟は避けた。
『嫌～～～～っ！！』
「！？」
そして、難なく魔法障壁を抜け、リアンへと向かう。
光球がリアンに触れたその瞬間、リアンだけでなく、デュオンの方も同時に倒れた。
――その二人を見て、内心ため息をつく。
とにかく引き上げようと動きかけた時。
「――デュオン？」
デュオンに駆け寄ろうとしていたフリックの、訝しむような声が、横から聞こえた。
視線を向けた先で、デュオンの手がぴくりと動く。
そのままどこかゆらりとした動きで、デュオンが立ち上がった。
「デュオン、大丈夫か」
フリックが声をかけたが、デュオンはその言葉には、反応しない。
デュオンはどこか暗い――どこも見ていない眼差しのまま、つぶやいた。
「――帰ら、ないと――」
「！？」
瞬間、ぶわっと黒い闇が湧き出し、デュオンを包んだ。
「お、おい？」
フリックのとまどうような声を残し。
――デュオンは、闇と共に消えた。
――戻った、のか。
望んでいた状況なのだろうが、僅かに気が重いのは、なぜだろうな。
――あまり深く考える気もないけど。徒、何となくそんな気がするだけだ。
「どうなってるんだ？」
フリックの言葉に、ため息と共に告げる。
「そっちは放っといてもいいよ。――それより、こっち運んで」
と、リアンの方を指す。
「あ、ああ……大丈夫ならいいんだが」
フリックは疑問符を浮かべながらも、それ以上深く訊いては来なかった。