9P
希の階～仲間となる者～
「おーい、ルビイ、来たぞ～！」
ルビイが用心棒をやってる酒場に飛び込むと、ジト目が返って来た。
「又来たんかい……ムダやムダ、やることがある言うたやろ！」
「やる事って何だ？ 俺手伝うよ。そしたら仲間になってくれる？」
そう訊くと。
「何でそんなにこだわるんや」
「面白そうだし、強いし、気が合うかなーって」
「迷惑や！」
「でもルビイさん、私達の力なら、お役に立てるかも知れませんよ？ 貴方の目的を教えては頂けませんか？」
サフィの言葉に、ルビイは〝あー、飲まんとやっとられんわ〟 とビールを煽って。
「……人捜しや」
そうつぶやいた。
「誰を？ どんな奴？ 何で？」
「そないな事ベラベラ言えるかい！」
「でも聞かないと捜せないだろー？」
そう言うと、ルビィは溜め息をついて。
「――カロールって奴や。何や暗ーい感じで、長い青い髪で……」
「カロール？ 青い髪……？」
どっかで見たような。
「あ、もしかしてこないだの！」
「見たんか！？」
「うん、こーんな帽子かぶってたけど」
と、手振りで知らせると。
「それや！ どこで見た？」
「えっと……」
ガシッ！
いきなりサフィの腕が俺の言葉を遮った。
「わっ」
「知りたいですか？ 王子に忠誠を誓うなら、教えて差し上げます」
「う……」
ルビイは顔を顰（しか）めて、こっちを見据えた。
「その話、ホンマやろうな？」
「うん、ホント」
「そうか」
ルビイがスッと俺の足元に跪いた。
「え？」
今までとは違う、厳（おごそ）かな口調。
「――いついかなるその時も、御身に従い、忠誠を誓います。剣と、額と、この胸に祈りを。――そして、許しを」
「え、えっと……許す」
驚いた、ルビイってこんな改まった事するんだ。
「意外ですね、そんな作法を知っているなんて。もしかして貴方は……」
サフィも気になるみたいだ。
でもルビイは面倒そうに腕を振った。
「どーでもええやろ、戦いには関係あらへん事や。言っとくが、忠誠なんぞ謳（うた）うんは、戦いの間だけや。宮仕えなんぞ御免やからな」
「……うん、解った」
ちょっと惜しい気もするけど。
「ところでさ、ルビイ、何であいつ捜してたんだ？」
「……この胸の傷をつけたのがあいつや」
ルビィの眼が閽（くら）い色を見せた。
「え」
「俺は、あいつをぶっ殺さな気が済まんねん。他の事、考えられへん程にな」
「……何があったんだ？ 斬られるような事、したのか？」
そう訊くと。
「お前、ほんまに遠慮を知らんなぁ」
ルビイは呆れた口調でそう言ったけれど。
「聞かなきゃ解らないだろ？ 何にもさ」
「……せやな、確かに」
少し考えた後、そうつぶやいた。
「だろ？」
「けど、今は駄目や」
「えー、けち」
俺は不満の声を上げたけれど。
「ドケチ上等や。ほな、行くで」
ルビイはそう言うと、席を立って歩きだした。
前のページへ 次のページへ 目次へ 入り口へ戻る トップページへ戻る