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希の階～希みの謎かけ～
「なぁ、ルビイ。お前は〝青の賢者〟の伝説って信じる？」
テントへの道中、俺はルビイにそう話しかけた。
「何や藪から棒に。伝説っちゅーよりお伽話やないんか？」
「それがさぁ……」
こないだ会った水色頭の事を話すと。
「あかん、だまされとる！」
「やっぱりそう思う？ でも湯元から毒が消えたのは本当なんだよな。サフィも力は感じるって言ってたし。
――〝奇跡〟なんて本当かなぁ……」
「気になるんか？」
ルビイの言葉にうなずく。
「うん。どうやったんだろうって、解らないのは気になるだろ？ それにそんな力が本当だったら、仲間にならないかなぁって」
「なるほどなぁ」
「この間は〝バカで詐欺師〟って言って怒らせちゃったからさ、ちゃんと話せなかったんだよなー」
「言ったんか……相変わらずやなー」
ルビイの言葉に呆れと苦笑が混じる。
「もうどっか行っちゃったかなぁ。どうやって探せばいいんだろ」
「名前を呼んだらいいんじゃないかな」
「でも俺、あいつの名前、知らないし」
「おい、坊主……」
ルビイが立ち止まる。
「知りたいかい？」
「……あ。」
すぐ傍の木の上に、この間の水色頭がいた。
途中からこいつが話してたのか。
「こいつか？」
「うん」
ルビイの言葉にうなずく。
「やぁ、また会ったねぇ」
相手は独特の詠うような調子でそう言った。
「お前を探してたんだよ」
「そんなに僕の力が欲しいのかい」
俺は顔を上げて、そいつに視線を合わせる。
「それもあるけど……それより色々訊きたい事あってさ。どうやって毒消したんだ？ 〝奇跡〟なんて本当にあるのか？」
「人はねぇ、勝手な者なんだよ？ 横着とも言うかな？ 努力すれば手に入る事でも、簡単に他の力に頼りたがる。だから僕は世のため人のため……望まれる力を使う代わりに、生きる糧を細々と手に入れているのさ。だから、本当の意味での〝奇跡〟なんて――存在しないんだよ？」
「存在しない？」
そう問い返すと。
「あそこの村人は、自分達で毒を消す努力をしないで僕に縋った――そういう事さ」
「お前なら、簡単にそれが出来るから？」
「さて……そうだねぇ」
水色頭は意味深な笑みを浮かべてこっちを見ている。
「お前なら、俺を王様に出来る？」
そう聞いてみると。
「ああ、出来るさ」
と、あっさり言われた。
「ホントに？」
「本当さ。でも、それをして僕に何か得があるのかい？」
俺は少し考え込んだ。
「得……。お前は、叶えて欲しい願いとかあるのか？」
「ん？」
「俺に何か願う事、ある？」
彼は微かに息をついた。
「……君は変わった子だねぇ」
「え、そう？」
「君はプラチナ王子の様に、駆け引きを楽しむタイプじゃないけれど……、そうだね、一つ賭けをしようじゃないか」
「賭け？」
彼は告げる。
「もし君が……僕の本当の願いを当てて、それを叶える事が出来たなら……僕は君を、王にしてあげるよ」
「お前の……本当の願い？」
何だろう？
「ああ、乗るかい？」
「もし出来なかったらどうなるんだ？」
そう訊くと、さらりとかわされた。
「さぁて。自信が無いのかい？」
俺はちょっとムッとして、首を横に振った。
「そんな事ない。――仲間になってくれるんだろ？」
「ああ、なろうじゃないか。君の有り様はなかなか面白いからね。例え望みが叶えられなくても――それなりには楽しめそうだ」
「おい坊主、大丈夫なんか」
ルビイの言葉にうなずく。
「うん。――解った、お前の願いを叶えるから、俺の力になってよ」
「大きく出たねぇ。まぁ、これで契約成立だ。僕の事はベリルと呼んでくれたまえ」
「解った。よろしくな、ベリル」