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希の階 〜プラチナとの初戦〜
お茶を片手にくつろぎ中、サフィが天幕に飛び込んで来た。
「王子！ プラチナが攻めて来ました！」
「えっ もう来たのか！？」
慌てて跳ね起きる。思ってたよりずっとはやいぞ。
「まさか、もう仲間がいっぱいとか？」
「いえ、それはありません。ですが気を付けて下さい、プラチナは……」
「解ってる。強い、んだろ？」
横に置いてある杖を掴む。
それでも俺は、少し興味があった。そのプラチナって奴に。
サフィはうなずいて。
「はい。それに……参謀のジェイドは卑怯な手を厭（いと）わない相手ですから」
「あーサフィ、嫌いなんだっけ？」
「敵です」
やけにきっぱり答える。
「とにかく、行こう！」
テントを飛び出すと、相手はすぐ近くまで迫っていた。
銀の髪に青い眼、って事は……。
俺は、剣を帯びた背の高い奴を見据える。
青いスーツに白のマント。髪を頭の後ろ、高い位置で一つに括っている。
「お前が、俺の弟？」
「……兄上？」
静かな声。
「何か、思ってたのと全然違うぞ。ツノもキバもないな。フツーっぽい。
――全っ然似てないけど」
最後の部分に自然と力が入る。
「……」
すると、傍に在た、深緑がかった髪に片眼鏡の参謀が嫌そうに口を開いた。
「何だそれは。バケモノか。坊ちゃん、一体どんな外見をアレク王子に吹き込んだんです。
似てないっていうのは、同意見ですが」
小バカにしたような視線をサフィに向ける。
「なっ、私は事実をありのまま宣べています！」
俺は相手の参謀を見る。
「で、そっちがイヤミで性格悪い参謀？」
「お前……」
「本当の事でしょう」
睨むジェイドと切り返すサフィ。――仲悪そう。
俺は改めてプラチナを見る。
冷たい位、青い瞳。
「お前は、城の地下に在た頃の事、覚えてる？ お前は目が開いてたって聞いたよ」
「……」
「俺、お前はどんな奴だろうって思ってた。――お前は？」
「……」
相手は沈黙したままだ。
「何か言えよ〜」
「……馬鹿が」
「なっ！」
「お前と俺は敵同士。……それだけだろう」
「……でもさ」
俺が反論しようとした時。
「王子！ 危険です！ プラチナは敵ですよ！」
「……お前の参謀は解ってるじゃないか」
サフィの言葉にプラチナまで同意を示した。
「……解ったよ、プラチナ」
俺は渋々そう言った。
ここまで無表情で偉そうな奴だとは思わなかった。
聞く位いいじゃないか。
俺は僅かに下がって、杖を構える。
「――行くぞ」
プラチナの声が、開戦の合図だった。
「……」
結果は、俺の惨敗だった。
アイツは、今の俺など殺す価値すら無いと、屈辱的な言葉を残して去って行った。
―――だけど。
「……あいつ、本気、だったな」
あの、冷たい眼。本気で俺を殺そうとしていた。
「……本気じゃないのは、俺だけだったんだ」
ズキズキと痛む身体を抱えて、つぶやく。
「――王子も、本気になって頂けますか？」
サフィもあちこちケガしてる。
「――うん。……ごめんサフィ、俺がんばるよ」
勝たなきゃ、生き残る事さえ出来ない。
「……ええ、王子。未だ、これからです」
……俺は心の中で、再戦を誓った。
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