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希の階〜ルビイとカロール〜
「……ほんま何で気づかへんかったんやろな」
ルビイはカロールの顔を覗き込んでそう言った。
「え？」
「よう見るとほんま似とるのに」
「誰に……ですか？」
ルビイは思い出すように答えた。
「親父（おとん）の若い頃にや」
「……」
「――それは少しはお前の救いになるんか？」
「……解りません。けど少し……嬉しい気もします」
「そうか」
ルビイは空を仰いで。
「親父（おとん）は天使を家に迎え入れようとして反逆者として粛正された。ジャンクソン家も無うなった」
「！ でも……そんな話僕達は一言も……」
「ああ、行かんかったと思う。告発したのは母親（おかん）や。――最後の意地やったんやろうな。……優しい人の筈やってんけどな」
その言葉にカロールはうつむいた。
「……ごめんなさい」
「へ？」
急な言葉にルビイは少し間の抜けた声を上げた。
「貴方はもう十分罰を受けていたのに……僕は僕の都合でしか物を考えていなかった……。勝手に貴方は幸せだと思い込んで……妬んでいたんです。復讐なんて……本当に下らない。貴方を切った事も……徒自分の在場所を壊しただけです」
カロールの素直な言葉に、ルビイも少し居心地が悪そうに謝った。
「俺の方こそ、気づかんで悪かったな。八つ当たりで天使をバカスカ切っとる俺は、お前からしたら酷い奴に見えたやろ」
「……もういいです。けど……この後に及んで僕は貴方が羨ましい」
「何や、未だ何かあんのか？」
「誰からも好かれるその性格が。僕は……暗いです」
カロールはため息をついた。
「そんな帽子取って笑えや。昔は笑うてたやん」
「あれは演技してたんですよ、本来の僕じゃ無い」
そういうカロールに、ルビイはもう暗い話しには飽きたと言った様子で。
「これ以上痛い話させんなや。いいから笑えて」
「無茶言わないで下さい」
「ほれほれ」
ルビイはカロールの頬をつついた。
「もう……止めて下さいってば……おにいちゃん」
「う……そう来るか、意外な反撃やな」
ルビイが少し怯んだのを見て。
「これが反撃になるんですか？ だったらいくらでも言ってあげますよ、ルビイおにいちゃん」
カロールはクスッと笑ってそう言った。
「うわ、ごっつ性格悪。かなわんなぁ」
ルビイは苦笑いを浮かべたが、どこか嬉しそうでもあった。
「……あいつらに……俺達にもう一度力貸してくれへんか？」
「――はい」
ルビイの問い掛けにカロールは静かにうなずいた。
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