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希の階～届く応えを～
俺はプラチナの部下達の在る牢に向かった。
最初の一言は辛かった。
「――参謀が裏切った」
「裏切った？ どっちのや」
牢番をしていたルビイが確かめるように尋ねる。
「……両方だよ。サフィルスとジェイドはグルだったんだ――王の印も盗られた」
俺は一呼吸置いて続けた。
「あいつ等は天使で――この奈落を滅ぼそうとしてるんだ。で、お前達、俺の仲間にならない？」
「……私は、断る」
真っ先にそう言ったのはジルだった。
俺はジルの前に立った。
「ジル、俺、プラチナを護るよ。プラチナだって奈落の民だ。参謀に言われた事だけが全てじゃない。
俺は、俺自身が大事だと思う奴を助けられる様になる。――これがずっと伝えられなかった俺の応えだ」
そう言うと、ジルは俺を見下ろして。
「……お前は大人になったな……あの時よりずっと」
「お前に言われた言葉、ずっと考えてた。だからだよ。いつか話せる時が来たら話そうと思ってたんだ」
「……そうか」
ジルは僅かにうなずく。
俺は言葉を続けた。
「お前はやることがあるんだろう？ 〝生き残る為〟に俺の誘いを蹴ったんだから、簡単に始末しろとか言うなよな。俺の為でなくていい。自分とか、奈落とか、プラチナの為でいいから。どうか俺に力を貸して欲しいんだ」
「――そう、命の駆け引きは慎重に行うべきだよ。今だから特に――ね」
「ほら、ベリルもこう言ってるし」
「……」
その時、後ろから付いて来ていたプラチナが口を開いた。
「俺は兄上に従うと決めた。皆も――頼む」
「プラチナ。――お前がそう言うのならば――俺は構わん。従おう」
ジルに続いてロードも口を開いた。
「オレもそれでいいぜ」
「……解りました」
カロールも了承した。
「やった、ジル以下三名、俺の指揮下に入ってもらうよ。それから――そっちの二人も俺の部下と話しておいてよ、色々わだかまりがあるんだろ？」
そう言うと、プラムはロードと、ルビイはカロールとちらりと視線を交わした。
部屋に案内しながら俺はジルに訊いてみた。
「そう言えば、何でジルはベリルを〝マスター〟って呼ぶんだ？」
「マスター……話されなかったのですね？」
「……」
付いてきていたベリルがため息をつくような沈黙で答えた。
「そーなんだよ、こいつ、肝心な事は何も話してくれないからさ」
指さしてそう言うと。
「……俺は昔、この方に妻の遺言を届けて貰った事がある」
代わりにジルが口を開いた。
「え？」
「そして、復讐を望んだ俺に、普通の魔人よりも長い時間と〝力〟を与えてくれた」
「そうなの？」
ベリルにそう振ると、彼は下を向いて。
「彼は僕の眷属にしようとして、失敗した者だよ」
と答えた。
「失敗？」
ベリルはうなずいて。
「ああ……全く、優しいバカな所は変わらないね」
「は……申し訳ありません」
「何で謝るんだい」
呆れた様なベリルの言葉。
「ふぅん……だからジルはベリルの事をマスターって呼んでたんだね。――あ、この部屋使って」
「解った、使わせて貰おう」
俺たちは部屋に入って行くジルを見送った。
どうやらベリルとジルは他の仲間達とは違って、憎み合ってる訳じゃないみたいだった。
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