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希の階～迷い～
コンコン。
控えめなノックの音と同時に声がした。
「未だ起きとるか、坊主」
「ルビイ？」
ガチャリと扉を開けると、そこには案の定ルビイが在た。
「どうしたの、ルビイ」
「いや……大丈夫か？ お前」
「……俺は大丈夫、だけど……」
大丈夫じゃない敵方の面々が頭を過ぎった。
「丁度良かった、ちょっと中入って話さない？」
「ああ、ええで」
俺はルビイに話してみる事にした。
ジルに言われた事を。
「実はさ、ジルが敵になる前の話しなんだけど……ジルは、俺達の戦いを〝辛い戦い〟だって言ってたんだ」
「辛い戦い？」
「〝実の弟と戦って辛くはないのか？〟って訊かれた」
「！」
ルビイの顔色が変わった。
「他にもよく知りもしない相手と戦えるのか？ とか、知ろうとする事を諦めるのか、とか……」
「……確かに俺は知ろうともせんかったからな……」
少し眼を反らしたルビイに俺は構わず言葉を続けた。
「〝違う道が開けるかも知れない〟とも言った。〝難しい事では無い〟とも。でも……俺には難しいよ」
「確かに意味深なセリフやな……坊主はどう思うんや？」
「……辛い戦いだって言うのは解った気がするよ。けど違う道って言われても……」
「せやな。……難しいやろな」
「ルビイはどう思う？」
聞き返すと、ルビイは頭に手をやって。
「うーん……俺かて複雑やで」
「そうなの？」
「ああ。いざあいつが殺されると思うと……未練て言うんかな、複雑な気持ちになるんや」
「そっか……ルビイも……」
俺はうつむいてつぶやいた。
「何か上手い方法あらへんかなぁ」
「俺達が殺し合わなくて済む方法、か……プラチナも考えるだけならって言ってくれたんだけど……」
「何？ お前等いつの間にそんな話ししてたんか？」
「う、うん、あはは……」
思わず乾いた笑いで誤魔化した。
「全く甘いやっちゃな」
「うん、プラチナにもそう言われた。……勝てば助ける権利も貰えると思ったんだけどなぁ……」
「坊主……」
ルビイが気遣う様に声を掛けて来る。
「俺達には他の誰かの命も掛かってる。だから闘った。だけど……」
「……今は助けたい、か」
「……うん」
その言葉に俺はうなずいた。
「坊主が王様になれば変えられるかも知れへんけどな……」
「うん……俺どうすればいいんだろ」
するとルビイの手がわしゃわしゃと俺の頭を撫でた。
そのまま肩を引き寄せられる様にして抱き寄せられる。
「ルビイ？」
「せっかく勝ったんや。そんな辛気くさい顔せんと笑えや。お前らしくないで」
「ルビイ……うん、そうだね」
「参謀殿は嬉しそうやったけどな」
「うん……」
確かにサフィは嬉しそうだった。
「ま、なるようになるやろ」
「そうだけど……俺はやっぱり諦めたくないんだ」
そう言うと、ルビイは笑って。
「ああ、その方が坊主らしゅうてええで」
「そうかな」
「ああ、俺も無い知恵絞ってみるわ」
そう言ってくれた。
「ありがとう、ルビイ」
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