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希の階～仮定～
結論から言って、サフィの手掛かりは見付けられなかった。
俺達だけじゃなくて、プラムやベリルも。
「ベリル、一人で大丈夫だった？」
ベリルに声を掛けると。
「ああ、問題ないよ。天使の気配はしたけど、闘ってはいないしね」
「え、魔人を襲わない天使もいるのか？」
天使っていきなり襲ってくる奴等ばっかりかと思ってたけど。
「それは在るさ。……でも、それでも天使は魔人の敵なんだよ。――それだけ覚えておきたまえ」
俺には、ベリルの言っている事が良く解らなかった。
「うーん、良く解んないや。大体、何で天と奈落……天使と魔人は戦ってるんだ？」
ごく基本的な疑問をぶつけると。
「さてねぇ。神様がそう創ったからかもしれないね。ここは天に在られなくなった天使達が堕ちてくるゴミ捨て場の様な所だからね。天に在られず地にも在られず……唯、天の者としてのプライドだけで魔人を集団で襲う……天使とはそういう存在さ」
「それって何か悲しくないか？」
俺がそう言うと。
「そうだねぇ、天から降ってくる天使は大抵は狂っているものだけど、中には理性が残っていて騙そうとしてくる奴等も在る。まぁ、気を付ける事だね。プラチナ王子の前にザコ天使にやられない様にね」
「……うん、でも天使と魔人って羽根がある以外は変わって見えないよね。血だって赤かったし」
「アレク……」
俺はベリルに訊いてみた。
「ねぇ、ベリルはもし俺に羽根があったらどうする？」
「止めてくれ！」
ベリルは珍しく感情的に俺の言葉を遮った。
そしてハッと気がついた様子で。
「あ……取り乱してごめん。でも僕はそんなもしもの事なんか考えたくないんだ」
「ベリル……」
「君は、君だよ」
ベリルは噛んで含める様に、繰り返した。
「君は、君なんだ」
「……ありがと」
何だか少しだけベリルの本音に近づけた様な気がした。
希の階～再会～
俺はベリルと別れてテントの外に出た。
その時、プラチナの言葉が頭を過ぎった。
〝俺の参謀については、解らんがな〟
それってやっぱりジェイドが怪しいって事なのか？
ぐるぐるしながら俺は外へ足を向けた。
だから、最初、夢かと思った。
近付いて来る人影を見た時。
「サフィーーーーッ！」
俺はサフィルスに駆け寄った。
「……王子」
「どこ行ってたんだよ！ 心配したんだからな！ お前が在ないと色々困っちゃったし」
「でしょうねぇ、済みませんでした。ちょっと油断して捕まってました、えへ」
「えへ、じゃなーーい！」
すぱーんとツッコミを入れた。
「い、痛いですよそこ本気で」
「あ、ごめん。でも良く出てこられたな、捜しても全然情報無かったのに。やっぱりジェイドの仕業？」
「ええ」
「そっか……」
プラチナは知らないっぽかったもんな。
ジェイドの奴何考えてるんだろう。
プラチナに内緒で勝手な事してるって事か？
あいつの事、ちっとも解んないや。
「で、どうやって出て来たんだ？」
「それは内緒です。ちょっと裏技を使っちゃいましたからねー」
「裏技？ 何それ」
聞き返すと、サフィは微笑んで。
「ですから、秘密です」
「えーずるいなぁ。皆心配してたのにさぁ」
「そうなんですか？」
「そうだよ」
当然だろ？ とサフィを横目で見遣る。
「それは済みませんでした」
「――もういいよ、帰って来たんだから。――おかえり」
俺はサフィを出迎えた。
「ただいま、戻りました」
「うん」
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