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希の階～闘いの行方1～
「来たで、プラチナや！」
テントにルビイが来た。
「え、ホント？ 解った！ ……あれ？」
「どないした？」
「いや、サフィは？」
そう訊くと。
「参謀殿なら、斥候（せっこう）とやらでもう出とるで」
「え？ マジ？ 何時の間に」
姿が見えないと思ったら。
「ああ、妙にやる気やな」
「て事は、こっちは俺が指揮とるのか」
「ああ、頼むで！」
「う、うん……」
俺はぎゅっと拳を握り締めた。
「何や、緊張しとるんか？」
「う、ちょっとだけ。急に一人で指揮するって無かったからさ。すーはー、っと。――よし、行くぞ！」
「まかしとき！」
俺、ルビイ、ベリル、プラム。
俺達の前現れたのは――
「！ あなたは――何でココに在るですか……」
プラムが視線を向けた先に在たのは、艶のある茶色の髪を、黄色いバンダナでポニーテールにした赤のチャイナドレス姿。
「プラム？」
僅かに脅えと警戒を見せ、プラムがつぶやく。
「ハンターさん……」
「ハンター？」
こいつが？
その茶色の瞳は、鋭く好戦的な色を見せてプラムを射抜く。
「お前――ここで会ったが百年目だ！ 今すぐ俺に掛けた呪いを解きやがれ！ ギッタギタにしてやる！」
呪い？
「ダ、ダメなのです！ ハンターさん、あなたは悪い人です！ ボクたちの故郷を……！」
「ケッ！ 自分の身も護れねー方が悪いんだろ！ お前だって俺をこんな姿にして逃げやがった。何が〝慈悲の生き物〟だよ！」
「！ ボクは……」
プラムの瞳が揺れる。
「プラム！ ――おいお前！ プラムの悪口言うな！」
「おうじ……」
「あ？ 部外者は黙ってろよ！ それに俺の名前はロードだ！ 覚えとけ！」
プラムの瞳に決意の光が灯る。
「おうじ……大丈夫なのです。ボクはおうじと一緒に闘うと決めたのです。だから、ハンターさん――あなたから逃げないです！」
「へっ上等だ、返り討ちにしてやるぜ！」
プラムが俺に向かって叫ぶ。
「おうじはプラチナのところへ行くです！ ボクは大丈夫ですから！」
「――解った！ お互い頑張ろうな！」
「はいです！」
俺達は、プラムを残して、プラチナの在る方へと走った。
「ここから先へは進ませませんよ」
大きな帽子に青い髪の青年が現れた。
「カロール……お前、プラチナ側に付いたんか」
ルビイが珍しく固い表情で進み出た。
「見ての通りですよ」
「向こうに付いたんは、俺と敵対する為か？」
ルビイの問いに相手は淡々と答える。
「そうだ……と言ったらどうするんです？」
「訊くまでもないやろ」
「そうですね」
「坊主、ここは俺に任せてくれんか。こいつとは一遍決着付けなあかんのや」
ルビイの眼は暗い炎を燃やしている様だ。
「ルビイ――」
「坊主はやる事があるやろ。――気ぃ付けて行きや」
「うん、お前もな」
「任せとき」
俺とベリルは先へと向かった。
「お捜ししていました、マスター」
「！ お前は……」
長身のおっさん、ジルだ。
プラチナ側に付いたって聞いた時から、来るとは思ってたけど。
「マスター？」
俺はベリルの方を見た。
今、ジルはベリルを見てそう呼んだ。
どういう事なんだ？
ベリルは何時もの飄々とした口調で、だけど少しだけ視線を外している。
「僕は既に君のマスターじゃ無いよ。君だってもう、気付いているんだろ？ 契約なんて嘘っぱちだって。なのに何故、君は僕を追って来たんだ？」
「お伝えしたい事があって来ました」
「？」
「ですが、今は徒の敵とお考え下さい。この戦いに参加されているとは、思ってもいませんでしたが」
「……そうだね。だが、いい加減見ているだけと言うのも、性に合わなくなったと言う事かも知れないね」
「では、参ります」
ジルが身構える。
「君が僕に勝つつもりかい？」
「戦う以上、勝利を目指すのは当然の事です」
「言うね。――アレク、君は先に行きたまえ。僕は彼と、久々に本気の勝負をしてみるからさ」
「解った。――おっさん！」
俺は奥に向かいながら、ジルに叫んだ。
「俺、負けないからな！ 俺の仲間、全員幸せにしてやる！」
「……」
「フッ……」
ベリルが眼を細めて微笑った。
「？ 何だ？」
「いいや、武運を祈るよ、アレク」
「うん、任せとけ！」
少し開けた場所で、プラチナと対峙する。
「……戦うんだよな」
白い長身を、正面から見据える。
「少しは、ましな眼になったな」
勝たなければ、何一つ手に入らない。
だから――本気だ。
「プラチナ……行くぞ！」
俺達の闘いの幕が上がった。