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「サフィ？ 溜め息なんかついてどうしたんだ？」
「あ、王子、申し訳ありません」
「サフィって、そんな年かぁ？」
からかうようにそう言うと。
「違いますよっ、私は奈落でも若い部類ですっ」
「じゃ、何でだよ？」
そう聞くと。
「私だって色々忙しいんですよ、参謀ですからね」
「じゃあさ、仲間が一杯になったら楽になるか？」
「王子――」
俺はサフィの隣に腰を降ろした。
「サフィが元気ないとつまんないし」
「――やはり、貴方で良かったですよ」
サフィはそう言って微笑んだ。
「サフィ？」
「でも、気をつけて下さいね、奈落は弱肉強食……その優しさが仇になる事もあるのですから」
「うん、気を付ける」
俺は素直にうなずいた。
「ところで、何か御用でしたか？」
そうだった。
「あーうん、サフィはさ、俺が生まれた時、知ってるんだよな？ 俺ってどんな風だった？」
「……王子は、王子のままですよ」
「？ それじゃ解んないよ」
俺が疑問符を浮かべて言うと。
「私が対面した時、王子は既に今のお姿でしたから」
そう答えが返った。
「そうなのか？ それって普通と違う？」
「――そうですね、最初はもっと小さくて、無力な生き物です。王子のように言葉も知りませんし――母親の胎内から生まれますから」
「……」
だけど、俺だけ違う？
「俺だけ違うの？」
「でも王子。貴方は強くならなければならないんです。生き延びる為に」
「サフィ。俺って、変なのか？」
そう訊くと、サフィはやんわりと否定した。
「そんな事はありませんよ。同じように生まれても、この奈落には多種多様な生き物が在ます。貴方が未だ知らない種族も沢山。その違いに比べたら、生まれの違いなんて、些細な事ですよ、きっと」
「そうかな」
「ええ。――済みません、お気に障る話題を……」
俺は首を横に振った。
「ううん、俺が知りたいって言ったんだから」
「王子」
でも、何だろう、この感じ。
少し――寂しい――？
希の階〜違い〜
「ちょっと出掛けて来ようかな――」
空は陽射しが降って明るい。
いい感じの風が吹いてる。
ちょっと一人で考えたかった。
何となく、こんな日に黄昏れてたサフィの気持ちも解る気がする。
俺は、前に行った温泉街の方に向かった。
俺って何なんだろ？
この奈落で、俺だけ違う？
生まれ方まで違うなんて、思ってなかった。
そんな風に、珍しく考え事ばかりしていたから。
俺は、多分油断していたんだ――。