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希の階～罪と痛み～
俺は、闘って、勝って、その後どうしたい？
一緒に闘ってくれる仲間に、俺が力を借りるだけじゃなくて、何が出来る？
俺は、仲間と一緒に何がやりたい？
らしくない考え事で頭を一杯にしながら森を歩いていると。
「こ、来ないで下さい～っ」
「ん？」
何か、聞こえた。
「何で襲って来るですか？ ボクなんか食べたって美味しくないですのにっ。何で……何で皆ボク達を放っておいてくれないですか……！」
「この声……！」
聞いた事のある声だ。
俺は声がした方に走り出す。
「！ いた！」
この間のピンクの生き物……プラムが天使に襲われていた。
「何で皆ボク達を殺そうとするですか！ ハンターさんも……あなたたちも……ボクは……ボクはっ！」
「！ 危ない！」
襲い掛かる天使達に、俺が飛び出そうとした、瞬間。
プラムの瞳が……閽（くら）く、光った？
「……呪われよ……降り積もる雪にさえ、黒い足跡が残るように！ 呪われよ！」
「！？」
その瞬間、プラムに襲い掛かった天使達が――赤い血飛沫と共に飛ばされて……倒れた。
「な、何が起きたんだ？」
俺が習ってる魔法とは違う――もしかして、これが、言霊？
言葉だけで……こんな風になるものなのか？
「……」
俺はプラムに近付いた。
「おい、大丈夫か？」
「……」
「……ケガとかしてないか？」
「……どうして……がまん出来ないですか……ボクは……」
プラムの眼は、俺を見ていない。
それどころか、光が宿ってない。
「どうして……こうしちゃうですか……あの時から……」
「……ごめんな」
プラムの様子に、思わず謝っていた。
「どうして……アレクがあやまるですか？」
プラムの眼が初めて俺を見た。
「俺が助ければよかったんだよな」
「……違いますよ、アレク。奈落は弱肉強食がおきてなのです。ボクは弱いから……本当に食べられちゃっても文句は言えないのですよ」
「でも俺、そういうの嫌なんだ。それに……お前は弱くないよ」
だがプラムは首を横に振った。
「……弱いですよ。ボクは」
「なぁ、何でお前、未だこの辺に在るんだ？ ハンターの罠とかもあって、危ないんだろ？ 仲間はいないのか？」
そう訊くと、プラムはうつむいて。
「もう、ボクだけです。生きてるアプラサスは……多分もうボク一人なのです。ボクはもう、帰る場所は無いのです。
……ここは少しだけ、ボクの故郷に似てたです。だから、もう少しだけここにいたかったのですよ。どこにいても、危ないのは同じですから」
プラムは遠くを見る様な孤独な眼差しで森を見渡した。
「そうだったのか……じゃあさ、お前、俺と一緒に来ない？」
俺はプラムを仲間に誘ってみた。
「え……アレクとですか？」
「うん、俺、奈落の王子だから。今、一緒に闘ってくれる仲間を捜してるんだ」
「で、でも、ボクは弱いですし……」
プラムは遠慮がちにそうつぶやいたけれど。
「いいよ、弱くても。俺がいいって言ってるんだから」
「でもおうじは勝たなきゃいけないですよね？」
「そうだけど、勝つだけじゃ駄目だって言われちゃったしさ」
「？ どういう事ですか？」
プラムは小首を傾げた。
「俺に何が出来るのか、ちゃんと見付けたいんだ、俺。一緒に闘ってくれる仲間に何が出来るのか。それに〝数は力〟だってサフィも言ってたし。
だからさ、一緒に頑張ろうよ、プラム」
俺はプラムの名前を呼んだ。
「名前を呼んだら俺の事、助けてくれるんだろ？」
「そうですけど……ボクで、いいんですか？」
その言葉に躊躇わずにうなずく。
「うん」
「わかりました、ボク、一緒に頑張るです！ よろしくおねがいしますです、おうじ！」
「うん、よろしくな」
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