仲間と呼ぶ存在（もの）
次の日、ウィンディが呼び出したモンスター達で、敵の数は約十万まで増えていた。
レックナートがそれを元の世界へ戻そうとするが力が足りない。
ソウルイーター……生と死を司る紋章の力を貸そうかと申し出たが、その力は使ってはいけないと言われた。
そこにヨシュアが現れ、竜の紋章の力を貸してくれた。一人だけ、本拠地には来なかった仲間だ。
ドワーフの長老や、ロッカクの里のハンゾウ、戦士の村のゾラックも駆けつけて来てくれた。
そして、逃亡中だった時に僕達を見逃してくれた恩人である、アイン・ジードと戦い、胸の痛みを抑えながらもグレッグミンスター城に乗り込んだ。
そしてついにバルバロッサ皇帝と戦い……敗北したバルバロッサ皇帝はウィンディと共に空中庭園から身を投げた。
仲間と呼ぶ存在（もの）
グレッグミンスター城からの脱出時。帝国軍最後の戦力が僕達に襲いかかって来る。
その中で、ビクトールが言った。
「デュオン、ここは俺が食い止める。お前達は先に行け」
正直言うと、止めたかった。
だけど。
今自分が傍にいることの方が危険かも知れない。僕は一瞬だけソウルイーターに眼をやった。
「解った、急げよ」
「お前はまだまだこの国に必要な人間だからな」
ビクトールにまでそんなことを言われて、僕は複雑だった。
だけどそれを今口に出すことも出来なくて……。
「なーに、心配するな。不死身のビクトール様だ！」
僕は、振り切るにように、他の仲間達と共にその場を後にした。
仲間と呼ぶ存在（もの）
汚れた赤い絨毯の廊下をどれ位戻って来ただろうか。
将軍達も別働隊で脱出している筈だった。
その時。
まるで、飛ぶ様に。
フリックが僕の背後を庇って飛び出す。
「！！」
「ぐっ……」
フリックが脇腹に矢を受けて、低く呻いた。
「ばかやろう、気をつけろ！」
「お前……」
まさか、こんな日が来るなんて、思わなかった。
フリックが僕を庇うなんて。
そしてそれは僕が怖れていたことでもあった。
「先に行け……お前は、オデッサの望んだ国を創る人間だ。それをこんな所で、殺させる訳には行かないさ……」
フリック……僕は君の理想全てを引き受けられるような……そんな人間じゃないんだよ。
「フリック、僕は――」
だけど、今はダメだ。今は未だ――僕はリーダーなんだ。
置いては行きたくなかった。
だけど……僕は仲間のために我慢してばかりだ。
「死ぬなよ、フリック」
それが嘘偽りない僕の気持ちだ。
「オデッサに会うのは、ちょっとはやいからな」
フリックはそう言って笑った。
僕は飲み込んだ言葉を振り返ることなく、出口へと急いだ。