仲間と呼ぶ存在（もの）
「西方にある竜銅騎士団の長ヨシュアとは旧知の仲です」
と言うハンフリーを伴って、今度は竜銅騎士団を仲間に引き入れに向かった。
ハンフリーは普段は無口だけれど、今回は彼にしては饒舌だった。
つぶやくように。
「デュオンは……良くやっている……」
と言ってくれていて、認めてくれているのは正直に嬉しかった。
だが、到着してみると、竜の大半は毒を飲まされ眠ったままだった。
そしてフッチと言う、以前魔術師の島まで送ってくれた少年の様子が少しおかしかった。
僕達は解毒薬の材料の一つ、月下草を手に入れるため、副団長、ミリアの竜スラッシュで、シークの谷に向かった。
そして――テッドに出逢った。
ウィンディと共に。
テッドは語る、最後の力で。
「そう……この紋章は持ち主の最も近しい者の魂を盗み、力を増していく！ オデッサという女性の魂も！ デュオンの父親の魂も！ グレミオさんの魂も！ 全てお前が盗んだ！！」
「！？」
僕は思わずテッドから譲られた右手の紋章に眼を落とした。
「ソウルイーター、最後の命令だ。この俺の魂を盗み取るがいい！」
「！ テッド、止め……！」
とっさに右手を押さえ、防ごうとするが、ソウルイーターの力は想像以上に強く、テッドの魂はソウルイーターに盗まれてしまった。
僕は戦う〝目的〟を失ってしまった。
「これが月下草ね」
ミリアの声がする。
だがその声は僕を素通りする。
そして僕は、さっきテッドが言った言葉を思い出して、フリックの顔が見られなかった。
オデッサの魂をこの紋章が……。
「おいデュオン、今のテッドって少年、知り合いか？」
「ああ……僕の唯一の〝親友〟だ……」
フリックの問いに、僕はそう答えるのがやっとだった。
だが、悠長に考える間もなく、月下草を持ち帰ると、フッチが単独で二つめの材料、黒竜蘭を取りにグレッグミンスターの空中庭園に向かったと情報が入った。
直ぐに忍びとミリアの竜スラッシュを向かわせたが、少しばかり遅かったようだ。
フッチと騎竜のブラックは、ウィンディの魔法で撃ち落とされたらしく、森の中で発見された。
フッチは一命を取り留めたが、ブラックは発見時には既に絶命してしまっていた。
そして皮肉なことに、解毒剤の材料である「月下草」「黒竜蘭」そして「竜の肝」が揃ったのだった。
竜を失った竜騎士は竜銅を出なければならない。
フッチはヨシュアの頼みでハンフリーが引き取ることになった。
僕は、同じ痛みを抱えることになったフッチのことが、気にかかって仕方なかった。