仲間と呼ぶ存在（もの）
次の戦いは父上とだった。
正直、気は進まない戦いだったが、オデッサの残してくれた火炎槍の力があって、戦争に勝利することが出来た。
父上は、降伏ではなく、僕との一騎打ちを望んだ。
「その勝負、受けましょう」
僕は、そう応えた。
リーダーとして軽率なのは解っていた。
だけど、僕は誰も恨みたくなかった。
仲間達の、誰も。
だから、マッシュがビクトールに手を下させようとするのを止めて、勝負を受けた。
自分の手を汚すことを選んだ。
徒、それだけ。
そして、父上の遺言で、部下のアレンとグレンシールが仲間になった。
「デュオン殿、我らテオ様の遺言により、味方いたします」
「アレンと同じく」
その言葉と共に。
仲間と呼ぶ存在（もの）
フリックの故郷である戦士の村のテンガアールが、ネクロードと言うヴァンパイアに狙われていた。
ネクロードの名を聞いたビクトールは珍しく血相を変え、興奮気味にその行方を訊ねた。
そして取りあえず、その日は村長の家に泊まることになった。
そこにいたヒックスと言う少年が、クレオになぜ戦うのかと尋ねたら、
「守りたいものがあるから」
クレオはそう言って笑っていた。
クレオの守りたいものか……それって何なのかな？ 一つなのか複数なのか……。
僕は……守りたい者が随分増えてしまった気がするよ……。
大切な者を失くしてしまっても……。
この背を押す力を何と呼ぶのだろうね……。
僕にとっての大事な者と……大切な仲間達。
これ以上どちらも失わずに進めればいいのだけれど。
夜も更けた頃。
珍しくビクトールが険しい顔で窓の外を眺めていた。
「――どうかした？ ビクトール」
そう、声をかけると。
「俺は奴を――ネクロードをずっと探し続けていたんだ。奴は人間じゃない。紋章を使い、吸血鬼になった奴だ。奴のせいで、俺の生まれた村は全滅したよ」
「ビクトール……」
初めて聞く話だ。
普段はそんな辛い過去があるなんてこと微塵も感じさせないのに。
ビクトールが村に帰った時には、ネクロードの魔法で村人達はゾンビにされ、お互いに食い合っていたらしい。
想像するだけでも、辛い事実だ。
「ビクトールでも寝られない夜があるんだね……」
僕は改めてビクトールは凄い奴だと思った。
ネクロードに対抗するものを手に入れるために、クロン寺の洞窟に向かった僕達は、剣の呪いで三百年過去の世界を垣間見た。
幼いテッドがソウルイーターを継承する場面を。
なぜその場面に立ち会ったのかは知らない。
徒、皆、僕よりずっと重い物を背負っていたんだ。
親友のテッドのことを思うと、胸が痛んだ。
だけど、感傷に浸っているヒマはない。
元の世界に戻った後、ビクトールは吸血鬼を倒すと言う約束で星辰剣を手に入れた。
そしてヒックスを仲間に入れた一行はネクロードの城に乗り込んだ。
一等活躍したのは勿論ビクトールだ。
星辰剣がネクロードを切り裂いた。
それ以降、僕達の攻撃も当たるようになって……ビクトールはついに積年の恨みを晴らし、ネクロードにとどめを刺した。
「デュオン……いや、デュオン様。俺は長年の目的であるネクロードを倒しました。それを、今はなき故郷に報告に行こうと思っています。必ずまた解放軍に戻って来ます」
珍しく敬語を使うビクトールを僕は快く……送り出そうとして……。
「あーちょっと待ったビクトール」
「え？」
「瞬きの手鏡は置いてけ」
こうしてビクトールは故郷へと帰って行った。