(P1)
――出来るよ――
闇の中に、声が響く。
――僕も一緒に――
「……見付けた」
其の声に振り向くと、見覚えのある顔があった。
「！？ お前……ルイか？ 何でこんな所に――まさか喰われたんじゃないだろうな」
テッドがそう言うと、ルイはまさか、と笑った。
「僕の紋章の方が相性が良いから迎えに来たんだ。今、デュオンくんが君を呼んでる。僕の紋章が罰から赦しへと変貌した様に、生と死を司る紋章の〝生〟の部分を呼び起こそうとしているんだ」
「デュオンが？」
「そう、ほら、行こう？ 風が僕等を導いてくれるから」
良く見ると、うっすらと風が通る道がある。
「風？ まさかあのガキまで絡んでるのか」
「ルックくんには魔力のサポートをお願いしたから」
――テッド――
「ほら、呼んでいるよ？」
重ね続けた願いがついに其の当人にまで届いた。
――テッド――
其の声は何処か泣きそうで、悲痛な願いを含んでいた。
帰って来て欲しいと。
「けど……いいのか？」
テッドは僅かに躊躇いと戸惑いを見せた。
「応えは、君達が決める事だよ。――つまり、君次第って事」
「……」
――テッド――僕の〝一生のお願いだから〟――
――もう一度、一緒に――
「――応えてあげないの？」
「……デュオン……」
テッドは少しの間沈黙したけれど。
「……解った。俺も……あいつに逢いたい」
そう……答えた。
デュオンの右手が光を放ち、恐る恐る視線を上げると、目の前にテッドが現れていた。
「テッド……本当に……？」
自分で呼んでおきながら、デュオンは信じられない様子で手を伸ばした。
無理も無い。
認めたくは無いが、テッドはシークの谷で確かに死んだのだから。
デュオンの手が、テッドの肩に、頬に触れる。
確かな感触。
「お帰りテッド……！」
デュオンはそのままテッドに抱きついた。
泣きそうだ。
言いたい事も伝えたい事も、山程在った筈なのに。
目の前にテッドが在る。
それだけで全部吹き飛んでしまった。
「……ああ、ただいまデュオン……！」
子供じみたしがみつき方で自分を抱きしめる親友をテッドも抱きしめ返した。
――逢いたかった。
これからの問題は山積みだったとしても。
今は徒、この再会を喜びたかった。