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窓に射す僅かな明るさと、周りに満ちる暗い闇。
それは……まるであの夜と同じ。
一晩で、全てが崩れた時の。
俺は起きあがると、部屋の外へと向かった。
聞こえる筈のない、あの夜のざわめきが聞こえる気がした。
廊下に出る、階段を辿る、そして……
俺は、王座の間の扉を開いた。
そして――
ギィン！
聞こえる筈がない、剣戟の音。
現実じゃない。それは解っている。だけど。
〝皆 殺された〟
目の前に散った赤い色。振り下ろされた刃の光。
次々と――目の前に広がる。
〝お父さま……お母さま……〟
俺に向けられた殺意。
黒い翼と……刃の輝き。
そして刃が風を切る音と共に俺にも――
「クリストファー様？」
「！」
突然掛けられた声。
聞き慣れた声だと思うより前に、ギクリとして振り返った。
「――――シオン」
あの時と同じだ。
シオンが来なければ、俺も――
「如何されました、……眠れないんですか？」
「いや……シオン、お前は死ぬなよ」
「クリストファー様？」
「ずっと……言えなかった。俺達は、戦う事が必要だったから。けどシオン、お前犠牲にして生き残って、俺が喜ぶと思うのか！？」
「クリストファー様」
「毎度、解ってねーとは思ってたけどな。俺は……俺にはもう、親と呼べる存在は在ないんだ。お前以外にはな」
「！」
「お前まで在なくなったら……俺は……、誰も在ないこの国に残ったって、意味なんてねーんだ。
お前が此処に在るのは、俺が王族だからか？ お前に、臣下以外としての気持ちを望むのは間違ってるか？ 俺は、お前を単に臣下だとは思っていない。――今だから言うけどよ、お前と〝家族〟に成り切れない理由でもあったこの羽根を、重たく思ってた事だってあったんだぜ」
「クリストファー様……！」
「ま、何てーか……子供は親に楽して欲しいモンだぜ？ 無理すんじゃねーよ、頼むから。死ぬ覚悟が出来るなら、生き抜く覚悟を俺にくれ。俺の為を思うなら……長生きしろよ」
「クリストファー様」
「約束……しろよ」
「はい、約束します。生き抜いて……一生貴方の側に在ます」
その四角四面な言葉に苦笑する。
「おっさんも少しは自分の幸せとか考えろよ。そんな世話焼かなくても、俺ももう、子供じゃねーんだし。甘やかしてっとロクなモンになんねーぞ」
「そんな事はありませんよ。貴方は立派な国王でいらっしゃる」
「そーかよ」
よく言うぜ。
毎回スキあらば人間界にエスケープする俺によくそんな事言えるな。
「おっさん、甘過ぎ」
「クリストファー様、分不相応だとは存じますが、俺も、主君としてだけでは無く、家族として貴方を大事に思っています」
「シオン……言ってて恥ずかしくねーか」
「クリストファー様が先に仰った事でしょう」
「フン――俺は寝る。じゃあな」
「ああ。お休み、〝クリス〟」
（！）
不意打ちに、遙か昔、俺に翼が生える前、〝家族〟の形をしていた頃の呼ばれ方をした。
相変わらず妙な所で底意地が悪い。
思わず、ジト眼で返した。
「じゃーな、〝親父〟」
全く、シオンとマジな話なんかすると恥ずかしいったらねーぜ。