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あのころのままのオレの部屋。
そして、両親の部屋。
「ここで、オレの両親は殺された」
「先輩……」
翔が気遣うように呼んだ。
「夜中に、周りが騒がしいんで起きちまって……呼んでも誰も来ないから……母親探しにこの部屋に来たんだ……そしたら……」
紫苑が割って入った。
「クリストファーさま……もう……」
「オレはだいじょうぶだ、紫苑。……そういえば……」
「それは？」
セナの言葉にオレは少し笑って。
「隠し戸棚だ。さすがに、黒い翼のヤツらもここには気づかなかったみたいだな」
「昔はこの戸棚……、高くて手が届かなくて……。どうしてもこの中を覗いてみたいって騒いでたな」
「……今じゃこんなにあっさり届く……」
「なんですか？」
オレは具体的には話さなかった。
「オレの親父の形見……になっちまったな……今となっては」
「クリストファーさま……」
「……形見に持っていく」
「ええ……」
シオンは神妙な面持ちで頷いた。
「ここって、キッチン？」
杏里はあちこち見て回っている。
「そうだな……くす」
羽村が其れを見て。
「何、笑ってるんですか？」
「クリストファーさまは、よくここに遊びに来てましたね」
紫苑の言葉に御園生が異を唱える。
「王子さまが、キッチンに？」
「コックやメイドたちのアイドルだったんですよ、クリストファーさまは」
「ここに来ると、食いもんもらえたから、来てたんだよ」
「だって、いつもご馳走食べてたんじゃないんですか？ 王子さまなんだから」
「王子だって、腹は減るさ。食事の時間まで待ちきれなくてここに来ると、『味見』させてくれたんだよ」
「いいなぁ〜」
「味見のしすぎで、肝心の食事が食べられないなんてこともしょっちゅうでしたね」
「ばか！ ヘンなこと思い出すな！」
「すみません」
オレは大挙して此処に来た事を既に別の意味で後悔しつつあった。
百歩譲っておっさん達がついてくるのが仕方ないとしても。
何が悲しくて後輩や従弟達に昔の恥をさらさねばならないのか。
オレは恥かく為に来たんじゃねーっつうの。
さっさと最上階を目指そう。