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ウィンフィールド城へ〜来栖編〜
ウィンフィールド城に向かう隠し通路の途中で千倉がふと足を止めた。
「あ、ぬいぐるみが落ちてる」
「随分古い物ですね」
と瀬那。
おっさんは何か気づいた様子で。
「これは……もしかして……？」
俺は頷いた。
「ああ……そうだよ」
「逢坂さんのもの……ですか？」
御園生の言葉にも頷く。
「ああ……こんなところに落としたんだな……」
「逃げる途中で落としてしまったんですね。申し訳ありませんでした、気付かなくて……」
「ばーか。あの時はぬいぐるみなんかかまってる余裕はなかっただろ？」
「しかし、これはクリストファーさまが一番大切になさっていた……」
「もしかして、抱いて寝てたとか？」
と千倉。
「……仕方ねーだろ。五歳だったんだから！」
ヤケ気味に言うと。
「え？ 僕、この前まで抱いて寝てたよ。クロコっていうワニのぬいぐるみ」
「この前までって……具体的にはいつまで？」
御園生の疑問に千倉は
「遊星学園の寮にはいるまで」
其れを聞いた羽村がため息をついた。
「はあ……この前までってのもスゴイが……」
「ワニっていうのも、千倉らしいセンスだよね」
「え？ 何かヘン？」
「ふつうはクマだろう？ 逢坂さんみたいに」
「オレを杏里と一緒にするな！ 行くぞ！」
「クリストファーさま……ぬいぐるみ、持っていかれないんですか？」
水落までそんな事を言い出した。
「ンなもん、今さら……」
「置いていったらかわいそうだよ……ここでずっと、逢坂先輩のこと、待っていたのに」
「なら、千倉にやるよ」
「ホント！？ ありがとありがとありがと。ね、先輩、このクマの名前は？」
「……」
「先輩？」
「………………プゥー」
「プゥーさんだね！ ふふっ！ かわいい」
「はあ……行くぞ」
「うん！」
この時、千倉のお陰で、ほんの少しだけ五歳の頃の自分が救われた様な気がした事は絶対に秘密だ。
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