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「先生達、何そのカッコ」
千倉が言う通り、紫苑は茶色のスーツ、水落センセは白衣を着ていたのだが衣装が変わっていた。
「近衛兵の軍服です」
「ああ、ワープゾーンを通る間に本来の姿に戻った様だな」
二人は特に驚く様子もなくそう言った。
俺としては何となく懐かしさを感じる格好だ。
ちなみに俺や千倉、羽村や御園生は元の学生服のままだ。
紫苑と水落センセは町の様子を見てくると言って丘を下りて行った。
それから程なく俺達の前に『暴走』した黒い翼が現れた。
その眼は既に常人の物では無く……俺達は四人で其の黒い翼を撃退した。
その黒い翼を見ていた御園生は、
「成る程、僕もああだった訳か……」
と呟いた。
「お前は違うよ。あんなんじゃなかった」
翔の言葉に俺も頷く。
「お前は『暴走』を止められたんだ、黒い翼とは違う」
「其れは完全に暴走する前に止められたからだ。母さんのペンダントの力と翔のお陰だよ。僕の力じゃ無い」
「櫂……俺達は手伝っただけだ。櫂自身が暴走を止めたいと思わなかったら無理だった筈だよ」
完全に納得した訳では無いのだろうが、羽村の言葉に御園生は口を噤が（つぐ）んだ。
「何かあったのですか？」
紫苑と水落が帰って来た。
「『暴走』した黒い翼と戦った」
紫苑の顔色が変わった。
「！ お怪我は？」
「俺達は何ともねーよ。だけど……」
俺の懸念の続きを御園生が続けた。
「黒い翼ってそんなにしょっちゅう『暴走』するものなのですか？」
紫苑と水落の説明はこうだった。
黒い翼は生涯に二度暴走する。一度目は黒い羽が初めて生えた時で、二度目は……死ぬ直前。 何も見えなく、何も聞こえず、唯周囲の人や物を破壊し続けてしまう。
原因は解らない。黒い翼の体質としか言いようがない。
紫苑と水落先生が見たところによると、城下町は黒い翼の見回りが厳重なので入り込むのは 難しいと言うことだった。
紫苑の提案で、俺達は人の出入りの多い港町を拠点にする事にした。
港町は遠く、俺達は途中で野宿をしながら進む事になった。