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「君達の気持ちは解りますが……此処は黒い翼と戦って勝たなければ、青木君を救うことも出来ません」
水落先生の言葉に翔が振り向いた。
「直人を助けることが……出来るのか？」
「可能性は低いですが――他に方法がありません」
「解った――行くぞ直人！」
本気で木刀で打ち掛かる翔の後ろから千倉の澄んだフルートの音が追う様に響き渡った。
すると千倉の背には僕達のよりも小さな白い翼がはためいていた。
「千倉にも白い翼が……」
「恐らく先祖返りでしょう。ウィンフィールドと人間界とは全く交流が無かったわけではないのです」
「そうなんですか」
僕らも高見の見物はしていられない。
僕は心の何処かで凪の事を思い出しながらも、最大級の魔法を繰り出した。
心の高揚と共に僕の背にも白い翼が出現した。
そして翔と逢坂さんの背中にも。
酷く永く感じる闘いの後で、青木君の黒い翼は動きを止め、同時に地面に倒れ伏した。
其処に在たのは元の明るい剣道少年の表情をした青木君だった。
「翔……ゴメン……」
「直人！」
翔が青木君に駆け寄った。
けれど伸ばされた青木君の手は翔の手を滑り落ちる様にして地面に落ちた。
「直人！ 直人ッ！」
僕は凪の事を思い出しながら、掛ける言葉も見つからないまま翔達を見詰めていた。
「レイヤード様、〝封印の扉〟が！」
恐らく白い翼を持つ全員の力で扉が開いたのだろう。
レイヤード、続けてランが扉の向こうに飛び込んだ。
「このやろ、逃がすかよ！」
「待て羽村！」
東堂先生の制止の言葉も間に合わず翔は扉の中に飛び込んでいた。
「もう遅いですよ、今の翔に何を言っても無駄です」
そう言うと、僕も扉の向こうに飛び込んだ。