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望む選択２〜御園生櫂編〜
「……此処は？」
「保健室だ。――気分はどうだ？」
逢坂さんの口調は、軽いけれど、普段より心なし柔らかい。
「……平気です」
上半身を起こし、軽く息をつく。
言わなければならない事がある。
「……ごめんなさい」
「え？」
「凪の事……みんなの所為では無いと、解っていたのに――」
あれでは、八つ当たりだ。
「自分の気持ちを何処へ向けたらいいか、解らなくて。――ごめんなさい……」
「櫂……」
「もう、気にすんなよ」
逢坂さんは、何でも無い事の様に言う。
「本当は、彼も……助けてやりたかったのだが」
東堂先生は、そう言ってくれた。
「力になれなくて……ごめんね、御園生くん」
千倉は泣きそうな表情で謝って来る。
「謝るのは……私の方です。御園生コンツェルンが、黒い翼の手に落ちていた事……もっとはやく気付いていれば……。
君を辛い目に遭わせてしまいました。申し訳ありません」
そう言ったのは、水落先生だ。
逢坂さんから、事情を聞いた今、水落先生の言動にも納得が行く。
「いいえ……貴方が謝る事はありませんよ」
「櫂……」
「それにしてもムカつくのは、あの総帥って奴だ」
翔の言葉に、水落先生も同意する様に。
「えぇ、何者でしょうか」
僕は、溜め息をついて。
「何者も何も……若林学園長ですよ、あれは」
「……って事は、ランって奴は……」
「榊原先生です」
「成る程……」
「じゃあ、追い掛けようぜ！」
「学園長室だ！」
「ちょっと待て翔！ 其処は――」
ハッとして止めるより先に、翔は学園長室に踏み込んでしまった。
カチリ。
「え？」
しまった、と思うより先に。
学園長室の床が足元から消えた。
「落とし穴がある……って何で人の話を聞かないんだ！ 翔っ！」
「うわっ！」
僕達は、一緒くたに、洞窟の底に転落した……。