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それぞれの日常〜来栖編〜
音楽室の事件から一週間が過ぎた。
翔には待ってくれと言ったものの、俺はどうすればいいんだろう……。
俺は図書室に向かった。
――普段は行かねーんだが、仕方ねーな。
「クリストファー様、何か調べ物でも？」
おっさんが顔を上げる。――授業無い時はだいたい此処だ。
「いや、――その呼び方は止めろ。何処に誰が在るか解んねーだろーが」
授業中だからって油断しない方がいい。
「済みません」
「気を付けろよ」
「はい」
「おっさん、羽村はどうやってこの学園来たんだ？ 孤児院育ちだったんだろ？」
「羽村は小学時代に一度養子に出て、羽村の名字になっています。中学の時に、養子先の両親も事故で亡くして、孤児院に戻っていたようですが……。今回、学園長が剣道の腕を見込んで特待生として引き抜いたようです」
「そうか……」
そんな風には見えねーな。
「青木直人って生徒の事は知ってるか？」
「Ａ組の生徒でしたが、家庭の事情という事で、一週間程前に転校手続きが取られています」
「家庭の事情？ 何だよそれ」
――怪しいな。
此処は全寮制だ。そうそう転校する状況にはならない筈だ。
「解りません。青木はスポーツ特待生でしたし」
ますます怪しい。
――事態は思った以上に深刻なのかも知れねーな。嫌になって来た。
「分かった、もういい」
俺は余計な話にならないうちに、背を向けた。
「ク……逢坂、気を付けろよ」
後ろからおっさんの声がした。
「ああ」
羽村はあれ以来、顔を合わせても何も無かったかのように、何も言っては来ない。気になるだろうに。
――どうすっかな……。
俺は窓から空を見上げて、溜め息をついた。
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