(P７)
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「！？」
その気配に、僕とデュオンさんが同時に、首を痛めそうなほどの勢いで振り返る。
「今、の……あの子――」
「――間違いない……」
この右手の紋章と、魂が覚えている。
あれは……〝彼〟だ。
デュオンさんも、きっと僕以上に、〝彼〟の〝魂〟を覚えている。
「……戻って、来たんだ……」
立ち尽くして、後ろ姿を見詰める。
もう、戻るつもりはないと、そう言っていたけど。
「――ねぇデュオンさん、僕達……この場所を良い場所に出来てるかな……？ ルックが……戻って来たいと思う位――」
「……多分、あれが答えだ」
何だか、久し振りに、泣きそうな位、嬉しい。
デュオンさんも、少し眩しそうな眼差しで〝彼〟を見送っている。
「……本当は……」
ぽつり、とデュオンさんがつぶやいた。
どこか、遠い眼差しで。
「え？」
「だけど、本当は……俺は、〝彼〟には……ルックのままで、頑張って……いや、ただ、この世界にいて欲しかった」
「……」
僕が言葉を返せずにいると、デュオンさんは微かに微笑む。
「――だが、これは、俺の勝手な願いだ。――だから、秘密な」
「デュオンさん……」
僕はデュオンさんに視線を合わせる。
「僕は、忘れません。辛くても――全部連れて行きます。だから――〝秘密〟なんて言わないで下さい」
「……そうか……。――そろそろ、行こうか。ここはまだ――人の住む場所だ」
そんなふうに言うデュオンさんに、僕は念を押す。
「そして、僕達の在場所、ですよ」
「……あぁ、そうだな……」
一度だけ、振り返る。
願うことは同じだ。
――君が僕達を忘れたとしても、僕達は覚えて行く。
――例えどこにいたとしても――君の魂の平安を願う。
END.