７Ｐ
最終決戦後のグレッグミンスター城からの脱出時。
まるで、飛ぶように。
フリックがボクの背後を庇って飛び出す。
「！！」
「ぐっ……」
フリックが敵の矢を受けて、低く呻いた。
「フリック！？」
まさか、こんな日が来るなんて、思わなかった。フリックがボクを庇うなんて。
「先に行け……お前は、オデッサの望んだ国を創る人間だ。それをこんな所で、殺させる訳には行かないさ……」
――良いのかな、フリック？ ボクは君の理想全てを引き受けられるような……そんな人間じゃないんだよ。
「フリック、ボクは――」
だけど、今はダメだ。
今は未だ――ボクはリーダーなんだ。
ボクは飲み込んだ言葉を振り切るようにして出口へと急いだ。
歓喜と感慨の歓声と喧騒が木霊する。
だけど、ボクは。
やけに悔しい思いを噛み締めたまま、そこに立っていた。
――貴方は、それで良かったのかな。
そう問いたい気持ちはある。
だけど。
「……ありがとう、貴方のお陰でここに来られた。貴方は自分を嫌いでも、ボクにとって貴方は必要で――そして、最高の軍師だ。
貴方が許さなくても、ボクが許すよ。だから――お休み」
感謝してる。
だから、謝らない。
これ以上、背負わせない。
ボクが背負って覚えていく。
それは、切ない痛みで。
まるで歌のように。
遠い痛みと切ない祈り。
ボクは黙ってその場を後にした。
この国を――出て行くために。
一人で出て行こうとしたボクに、グレミオが追いすがって来た。
「ディー様、私も連れて行って下さい」
「ダメだよ、又死んだらどうするのさ」
「ディー様にお仕えするのが私の生き甲斐なんです。だからどうかお願いします」
何度同じ問答を繰り返しただろう。
結局ボクが譲歩した。
「もう……又死んでも知らないよ？」
「ありがとうございます、ディー様」
満面の笑みに、ボクは溜め息をついた――。
前のページへ あの頃の自分へ 小説目次２へ 幻想水滸伝関連目次に戻る トップページへ戻る