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吸血鬼、ネクロードを倒す手段を探しに行った時。
しゃべる剣、夜の紋章の化身である星辰剣に過去の世界に放り込まれたボク達は、そこで小さなテッドに出逢った。
一緒に連れて行きたかったけれど――それは出来なかった。
三百年……ボクには見当もつかない時間を、テッドは生きて来たんだ。
ボクはもう一度決意を新たにした。
絶対にもう一度逢って、そして……トモダチを助けるんだ、と。
ちなみにスカーレティシア城でグレミオの仇であるミルイヒを赦して以降、ボクをリーダーとして認めてくれるようになったフリックも同行してくれていた。
やっと、リーダーと副リーダーとして行動出来るようになっていたんだ。
そしてネクロードを倒し、ハンフリーと共に竜洞騎士団を仲間に引き入れようとしていた時。眠っている竜の毒を解除する薬の材料を集める手伝いをしていて。
シークの谷で……ボクは現在のテッドと出逢った。
そして……ウィンディとも。
「久しぶりだな……。お前に〝預けた〟紋章を返してくれよ」
テッドの様子は少しおかしくて……ウィンディの〝支配の紋章〟で操られていたんだ。
勿論、ソウルイーターを渡すわけにはいかない。
トモダチとの約束は、絶対に守る。
ボクは首を横に振った。
その時、ソウルイーターを通じて、テッドの本当の声が聞こえて来た。
これから自分のすることを赦して欲しい、と……。
ボクには何のことか解らなかったけれど、何だか酷く嫌な予感がした。
テッドは語る。
ソウルイーターが、過去の故郷の皆や、オデッサさんやグレミオ、父上の魂を盗み取って力を増していた〝呪いの紋章〟であることを。
ボクは思わず右手の紋章を見詰めた。
同時にテッドが最後の力を振り絞るようにして叫ぶのが耳に届く。
「かつての主人として命じる、今度はこの俺の魂を盗む取るがいい！」
「！！ テッド、駄目だ！！」
ボクは必死にソウルイーターを押さえ込もうとした。
だけど、ソウルイーターの力は強くて……テッドの魂はソウルイーターに吸い込まれてしまった。
それを見ると、捨てゼリフと共にウィンディは姿を消した。
「テッド！！」
ボクはテッドに駆け寄った。
「バカ！ 何でこんなこと……！」
「……ごめんな、ディー。こんなもの押しつけちまって……」
「そんなことどうだっていいよ！ 何でテッドばっかりこんな目に遭わなきゃならないんだ！」
そう叫ぶと、テッドは苦笑するように笑った。
「……はは、どうだっていい、か……。俺、お前に逢えて嬉しかったよ、親友」
「テッド……！ それはボクだって同じだよ……。やっと出来た大事なトモダチ……親友だよ……！」
「今度こそ……本当にさよならだ……元気でな……俺の分も生きろよ……」
「テッド……？ テッド！！」
……もう返事がない。
それが何を意味するのか認めたくなかった。
「これが月下草ね」
薬の材料を見つけたミリアの声がする。
だけど立ち上がれずにいるボクに、フリックが声をかけた。
「おい、ディー……」
ぱしん。
肩に置かれた手を反射的に振り払っていた。
「っ……あ……ゴメン……」
謝ると、フリックは逆にボクを気遣う様子を見せた。
「いや……大丈夫か？」
「……帰ろう」
ボクは暗い気持ちで帰途に着いた。
だけど哀しんでるヒマはなかった。
竜騎士見習いのフッチが黒竜蘭を手に入れるため、単身グレッグミンスターの空中庭園に乗り込んでしまったらしい。
急いで迎えに行ったけれど、少しばかり遅かった。
大事な竜を失ったフッチに、ボクはかける言葉が見付からなかった。
こんな時、口下手な自分が嫌になる。
「ほら、俺が剣を教えてやるからさ、元気出せよ」
フッチを励ますフリックを見ていて、ふと思い出した。
オデッサさんの言ってた言葉。
――そうだ、未だ伝えていない。
ボクはタイミングを見計らってフリックに声をかけた。
「今なら解る気がするんだ、オデッサさんの言ってたこと」
「ディー？」
フリックが不思議そうに視線を向ける。
「オデッサさんからの伝言だよ。〝貴方の優しさはいつだって私を慰めてくれた〟……」
「……オデッサ……」
フリックが目を伏せる。
「ゴメンね、恨んでもいいよ」
ボクは下を向いてそうつぶやいた。
「何がだ？」
「オデッサさんの魂も……この紋章が喰らってしまったらしいから……」
「ディー、お前のせいじゃない」
フリックはきっぱりとそう言った。
「でも」
フリックがボクの右手を取った。
そっと捧げ持つように。
「俺は……大丈夫だ」
「フリック……ありがとう、強くなったね」
「一応、副リーダーだからな」
「そうだったね」
ボク達は顔を見合わせて微笑みあった。
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