３Ｐ
そして、その時はやって来た。
父上……
泣きそうだ。
なぜ、と問いたかった。
理由なんか、解ってる。
ボクだからだ。
相手が、ボクだから。
だから、一瞬、躊躇った。
だけど、ボクは躊躇わなかった。
勝たせて貰った。
それが、哀しくて悔しい。
実力だけで言うなら……父の方が上だった筈だ。
師匠、これが……〝どんなに強い人間でも、死ぬ時はあっさり死ぬ〟ってことですか。
ボクは……謝らない。そして……躊躇わない。
ボクも……貴方と同じだ。
自分が信じるもののために……友のために道を決めた。
泣くものか。
ボクは、軍人だ。
そして――リーダーなんだ。
「ディー様！ ご無事ですか！」
「！ クレオ……」
駆け込んで来た人影に、瞬間ビクッとしながら、ボクは振り返った。
少し、怖かったんだ。
父上を〝殺した〟ボクには、クレオ達にどんな顔したらいいか解らなかった。
他の仲間達の前でなら、平気な顔してればいい。
でも、クレオ達は、違うから。
徒単に、勝利を望む他の仲間達とは違うから。
どんな顔をすればいいのか解らない。
だけど、今、クレオは。
ディーノ様、じゃない。ディーと呼んだ。
ずっと、ボクがリーダーの役目を継いでから、人目のある所では〝ディーノ様〟だったのに。
「――うん」
まともに顔を合わせ辛くて、ボクは言葉少なにうなずいた。
「……そうですか、良かった」
ためらいなく、ボクの肩にポンと手が乗せられた。
「……クレオ」
訊きたいことは沢山ある。ここでは訊けないことばかりだ。
訊けなくて口をつぐむボクに、クレオは、声を低めてそっと告げた。
「私は、後悔してませんよ。貴方に付いたこと。――貴方は……大丈夫ですか？」
「！」
クレオってば、やけに鋭い。
ボクを恨んでないかとか、ボクに付いて良かったのかとか、後悔してないのかとか。
仮にも上司を殺したこと、怒りたいんじゃないかとか。
そんな疑問が、一言でゆっくりと融けて。
「――うん、ありがとう」
多少、ぎこちなさはあったかも知れないけれど。
ボクは視線を合わせてそう告げた。
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