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３日目、夜２〜賭け〜
「何であなたがここにいるの？」
ノゾミちゃんがそこに在た。
「あ、やっぱり」
「あなた、今は随分と余裕があるのね」
「うん、何だかノゾミちゃんのこと理解した。だからもう、そんなに恐くないよ」
「……」
思いっきり呆れられたような溜め息。
まぁわたしだって少しは態度が極端かもって思うけど――
未知のものに対する恐怖は今はほとんど無い。
「それで、ここは一体どこ？」
「ここは、私の最初のすみか。ミカゲさえ立ち入らせたことのない場所なのに、どうしてあなたがここにいるの？」
「それはたぶん、ノゾミちゃんが二回もわたしの血を飲んだから――わたしの心まで、ノゾミちゃんの中に入ったんだよ、きっと。血は形のない魂の一部でもあるってノゾミちゃんが言ったんだよ？」
「それは……」
「それにね、ミカゲちゃんて何なの？ 何でノゾミちゃんの妹さんがお父さんに捨てられなっきゃならないの？ ノゾミちゃんだって閉じ込められてはいたけれど、出て行ったのはノゾミちゃんの意思であって、お父さんは関係ないよね？ それに、ミカゲちゃんっていつ鬼にして貰ったの？ ミカゲちゃんがノゾミちゃんの前に現れたのって主が封じられた後だよ？」
「それの、何がおかしいの」
「ノゾミちゃんが人から鬼に成ったのは、主にしてもらったからだよね？」
「ええ、そうよ――」
「それじゃあミカゲちゃんは？」
「――え？」
「ミカゲちゃんは、誰に鬼にしてもらったの？」
「それは――」
言葉に詰まるノゾミちゃん。
「だいたい、後からきたミカゲちゃんの方がいろいろ物知りなのって変だよ。封じの解き方とか、ノゾミちゃんも知らなさそうなこと色々。だってお姫様だったんでしょ？」
「――」
「ねえ、何だかノゾミちゃんって、ミカゲちゃんに操られてるみたいだよ？」
「そんなことないわ！」
ノゾミちゃんは怒って否定する。
「それじゃあ、お姉ちゃんのノゾミちゃんの方が立場が上なの？」
「上だもの！ ミカゲは私の言うことなら、なんでもきくわ！」
こうして怒っているのは、きっと図星を突かれたから。
だとしたら――
わたしはさらにノゾミちゃんを挑発する。
「じゃあ、賭けようか」
「……賭け？」
「試して、ミカゲちゃんが言うこと聞いたらノゾミちゃんの勝ち。聞かなかったらわたしの勝ち」
「……」
「自信ないんだ？」
サクヤさんに鍛えられた外交手段で背中を押すと。
「い、いいわよ、受けて立ってあげるわよ！」
ノゾミちゃんはわたしとの勝負を承知した。
「それじゃあ、一時休戦ね」
にっこり笑って差し出した手を、いかにもしぶしぶといった体で握り返す。
わたしは夢から醒めようとする。
あ、何を賭けるかとか決めてないや。
ま、いいか――
目を開くと――
「姉さま、もういいでしょうか」
「まだよ」
そうだ、もう勝負は始まっているんだ。
「ほら、ちゃんと言うこと聞いてるでしょう？」
「ん――、やっぱり」
「ま、まだ疑ってるの！？」
ミカゲちゃんには聞こえないように、食って掛かるノゾミちゃんの耳元でささやく。
「それじゃあノゾミちゃん『今日は帰るわよ』って言ってみてくれる？」
「え……？」
「なんかわたしが寝てる間に、『すぐに飲ませるから少しだけ我慢しろ』って言ってるみたいなんだよね」
言うことをきかせているというよりも、聞いてもらっているといった風。
「だから、『おあずけ』じゃなくて『今日はなし』でも言うこときくようなら、信じてあげる」
「それは――」
ぐっと詰まるノゾミちゃん。
結構扱いやすい性格をしていると思う。
「言うこと、聞かせられないんだ」
「できるわよ、それぐらい！」
そして結果は――
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