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３日目、夜１〜望〜
わたしは再びノゾミちゃんとミカゲちゃんに襲われて――
遠のく意識と同時に夢を視た。
双子は忌み子として、藤原望として座敷牢に閉じ込められている夢を視た。
差し入れられた良月という、望と同じ満月を表す鏡を手に入れ、その鏡に映った自分の顔を妹に見立てて、呪いの文言を吐きかけていた。
そして火事に乗じて世話役を良月で撲殺し、伸び放題だった髪を切り、外の世界に出たけれど、元々病持ちだった私は僅か数日間で行き倒れ、死にかけていた所を主さまに拾って貰い、鬼と成ったのだ。
良月を依りしろとした、人ではないモノに成り、私は自由を得た。
けれど、私が嫌いな夏。
私が贄の血を持つ竹林の長者の姫の話をしたばかりに、それを手に入れようとした主さまは観月の民と役行者に封じられてしまった。
私では封印の地に近づく事さえ出来ない。
悔しかった。
その思いの丈を良月に向かって吐きかける。
――良月から視線を感じる。
――だけれど鏡に映る私はこんな辛気くさい顔をしていただろうか。
いや、だとしたらこれは、妹の顔に違いない。
私と同じで、お父様に捨てられてしまったのだろう。
嫌いな相手だったけれど、誰もいないよりかはましだと思い、つんけんした態度を取りながらも話し掛ける事になる。
そして、ふと、気付いた。
鏡の中から、答えが返って来た事に。
「……あなたは、何という名前だったかしら」
「――ミカゲ」
そしてミカゲはこう言った。
「主さまをお助けしないのですか」
「どうやってお助けすれば良いのか解らないのだもの――あら？ 私、あなたに主さまの事を話したかしら？」
「来る日も、来る日も」
そうだっただろうか。
「それで、姉さま、聞いたことがあります。贄の血に陰陽揃うとき、役行者の封じを崩すことが出来ると」
「陰陽？」
「男女の双子です」
「そんな果報、寝て待つしかないんじゃなくて？」
「はい、ですけど封じの鬼の木が花を散らす度に主さまの魂は少しずつ削られています」
いつか遠い未来、主様はいなくなってしまう。
「それの邪魔ならできるというのかしら」
「はい」
そして私たちは封じの鬼の木を弱めるために、《力》を使い始めた。
ミカゲの言う通り、人を使って。
それで少しいい気になりすぎたのかも知れない。
鬼切部の鬼切り役がこの地へ遣わされ、良月が依代であることを知られて――
私たちは封じられてしまった。
ただ封じられるのもしゃくだったので、封じられる直前、ひとつだけ暗示をかけてみることにした。
気取られない様、遅効性の毒の様な弱い暗示を。
言霊による代々受け継がれていく呪い。
【あなたたちは鬼切部。鬼を切るのがその役目。だから観月の民も切らなければ】
そして私たちは暗い闇の中に閉じ込められた。
そして、その封じを解いてくれたのは――
「ふふふふふふーー」
私は鬼の嗅覚で、この子供たちが贄を持つ柱の血筋の子であることを知った。
しかも同じ顔をした陰陽の双子。
何て僥倖。
「だ、だあれ？」
「私はノゾミ――。あなた、名前は？」
「けい……はとうけい」
それは――わたしの名前だ。
わたしは私ではなく、わたしはノゾミではなく――わたしは羽藤桂。
だけど何か重大な事を聞いた気がする。
贄の血を引く陰陽の双子？
けれど、ここは夢の中だろう。
そして――