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遠い約束
「やあテッド」
聞き覚えのある声に振り返ると、見覚えのある顔があった。
「！ お前、ルイか」
ルイは屈託のない様子で話し掛ける。
「そうだよ。何年ぶりかな、元気そうだね、今どうしてるんだい？」
「グレッグミンスターに一人暮らし……って言いたい所だけど、マクドールって屋敷に世話になってる。ホラ向こうにある屋敷」
と、テッドは立ち並ぶ家々の中でも一際大きな屋敷を指さした。
「ふぅん」
その時、その屋敷から赤い服の少年が飛び出して来た。
そして一つの家の前で立ち止まる。
「テッド、在る〜！？」
「……呼ばれてるみたいだよ？」
「ああ。
――お前には言っておかなきゃな。あいつがマクドール家の子で、デュオン。俺の……親友だ」
「！ テッド……親友が出来たんだ……雰囲気も随分明るくなったんじゃない？」
「ああ、まさか俺にもこんな日が来るなんてなぁ」
「じゃあお祝いに、もしこの先僕があのデュオンくんに逢って、その時彼が何か困っていたら必ず力になるよ」
ルイはそう言った。
「そっか、ありがとな」
デュオンはテッドの家の前で首を傾げて。
「出掛けてるみたいだな」
とつぶやくと、踵を返した。
「あ、じゃあ俺行くわ。――逢えて嬉しかったぜ」
「僕もだよ」
テッドが去った後、ルイはつぶやいた。
「やっぱり、挨拶位はしておこうかな……？」
「やあ、初めまして。君がデュオンくん……だよね？」
「――何か御用ですか」
自分より、幾つか年上の少年が目の前に立っていた。
一人の時に道端で話し掛けられて、あからさまに警戒するデュオンに、ルイは苦笑した。
「ああ、何もする気はないよ。徒、挨拶しとこうと思って。君のことはテッドくんに聞いたからね」
「テッドの知り合い？」
「ああ、昔の知り合いだよ。彼を霧の船から引っ張り出した――ね。
僕の名はルイ。――覚えておいてくれると嬉しいな。――今は未だ、その時じゃないみたいだし」
「？ 何の話ですか」
「何でもないよ。じゃあ、出来れば又逢おうね」
そう言うと、ルイはすたすたと立ち去って行く。
「何だったんだ、あの人」
デュオンは徒、その後ろ姿を見送った……。
「じゃああの人、本当にテッドの知り合いだったんだ」
自室でくつろぎながら、デュオンが言う。
「ああ、前に戦争に巻き込まれた時の知り合い」
「何か霧の船がどうとか言ってたけど……」
「ああ、あいつが引っ張り出してくれた。まぁ恩人だな」
「ふぅん」
その時のデュオンには、その本当の意味は伝わらなかったけれど。
テッドが命を落とした瞬間に、全てが解ることになる。
そのことは、未だ誰も知らない――。