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三百年の孤独編
僕は同じ年頃の友達がいなかった。
だから、父上に連れられて君が来た時、嬉しかった。
君のこと、色々知りたいと思った。
でも君は曖昧な笑顔で、独りで出かけることが多かったよね。
僕は君を追いかけて――。
いつだったっけ？
覚えてるよ。
君が、僕の親友であり、家族でもある存在になった時のこと――。
「テッド……僕のこと嫌いなの？」
それまでに何度となく黙ったままデュオンの横をすり抜け続けたテッドを引き止め、デュオンはそのセリフを告げた。
「……何で？」
「避けてる、みたいだから。……家（うち）が嫌い？ それとも、僕が迷惑？」
テッドは沈黙の後。
「……そうだよ、だから、放っといてくれ」
そう言うと、踵を返す。
デュオンはその背に向かって。
「それ、本当？！」
と呼びかけたが応えはなく、相手は足ばやに立ち去っていく。
何となく納得のいかないまま、借りた家に帰って行くのを見送る。
ふいに、背中から声がかかった。
「坊ちゃん、どうかしました？」
父の部下で、この屋敷に住み込みのクレオだった。
「クレオ……」
デュオンは振り向くと疑問を告げた。
「クレオには、テッドが僕達のこと、嫌ってるように見える？」
困ったようなデュオンのセリフにクレオは微かに考える眼をして。
「嫌っているというより、遠慮してるように見えますね」
と言った。
デュオンは考え込むような表情を見せる。
「……うん……。でもさ、さっき、僕のこと迷惑だって……本当かなぁ……」
「坊ちゃんはどう思うんですか？」
「僕は……何か違う気がする。でも……良く解らなくて……いつもテッドに逃げられてる気がする……」
「怖いのかも、知れませんよ」
「怖い？」
デュオンはクレオの言葉に聞き返した。
「テッド君は戦災で怖い思いをしたり、大切な物を沢山失くしたのかも知れません。だからあまり近付きたくないと思うのかも知れない……」
少し深刻な眼をして、クレオは言う。
「どうして？」
「大切な物を作るのが怖いんですよ。もう二度となくしたくないと思うからでしょう。……なくしたものを思い出して辛いのかも知れません」
「……つまり……なくしたくないから避けてるってこと？」
「本当にそうかどうかは解りませんけど」
もし、それが、本当だったら……。
デュオンは哀しくなった。
「クレオ……僕ちょっと行ってくる！」
言うがはやいかデュオンは家を飛び出した。