「ジョウイと戦いたくない」
そう言った彼は、ナナミと共に逃げる道を選んだ。
デュオンは、奇妙な予感と共に、彼等の逃避行に動向した。
道中の彼は、自分を守ろうとする仲間と、自分の立場に戸惑い。
又、途中でゾンビ相手に真の紋章を発動した事もあって、とても辛そうだった。
それでも選ぶのか？
――選べるのだろうか。
デュオンは、リアンを見てそんな事を思う。
そして、見届ける為、守る為に棍を振るった。
敵に襲われた彼等の前に突如現れたゲオルグは、彼の意見を支持した。
思うように生きれば、それでいいと。
逃げる方が痛い時もある。
失うものは多いだろう。
どの道を選ぶとしても。
それでも、選べるのだろうか？
シュウにリドリーの死を告げられ、リアンは瞳を震わせる。
シュウの言葉はデュオンにも辛く響く。
軍主を信じる人々の痛みは、身に染みて知っている。
自分の行動も又、正しいとは言い難い。
軍主にあるまじき行為とは百も承知の上で、其れを助長した自分もまた、責められて当然だ。
デュオンはふと、ティントにいた若き軍師を思い出す。
彼も又、自分達と同じ様に、あえて〝彼〟を見逃したのだろうか。
疑問形になったのは、認めたくなかった所為か。
軍師にあるまじき行い。
しかし、それも人であるが故――
自分は未だ、人なのだろうか。
シュウ達が去った後、リアンもナナミも酷く辛そうだった。
リアンを守ろうとして、かえって苦しめてしまったと、ナナミは言った。
それでも二人は逃げ出す道を選んだ。
戦いの無い場所を目指して。
その後ろ姿を見送って、ほんの少しだけ羨ましいと思ったのは、単なる気の迷いか。
主を失った軍がどうなるか位、予測はつく。
それでもデュオンには未だやるべき事が残っていた。
「行こう。ネクロードをこのままにしてはおけない」
それは、ハイランドの事を抜きにしたとしても、やらなければならない事だ。
集った星がこの先如何なるのか。
それはまた、別の話。
恐らくこうなった時の事を考えないシュウではないだろう。
そしてそれが如何転ぶとしても、自分は関与しないつもりでいる。
しかし、ネクロードを倒せる存在は、今此処（クロム）にしか存在しない。
今止めなければ、ティントはおろか、周辺一帯が死者の国と化す。
それが理由とならないのなら、私怨でも構わないとデュオンは思った。
「……バカだね」
呟いたルックの言葉が耳に痛い。
「君が来るとややこしい事になるんじゃないの」
「だったら、シュウには黙っといてよ」
「……まぁ、今に始まった事じゃないけどね」
溜め息とも取れる言葉。
その眼がデュオン同様、少し哀し気に見えたのは、気の所為だろうか。
ルックはそれ以上もう何も言わず、デュオンも何も言わない。
それでも、とデュオンは思う。
何時かあの三人が、本当の意味で和解出来る時が来れば――
それは甘い感傷に過ぎないとしても。
ある意味で、別の可能性を見せてくれた二人に対して、デュオンはそう願わずにはいられなかった。