希の階３５

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　　　希の階～希望～

　城の一角で工事をしていた。
「何だか大掛かりな事をしているねぇ。何やってるんだい？」
　ベリルがそう訊ねると。

「へへー、出来るまで秘密！」
　アレクはそう言って笑った。

　そしてそれが完成したと聞いて来てみれば。
「じゃーん、どう？」

　アレクに言われて、それを見渡す。

　それは、石の色を一つ一つ組み合わせて作られた巨大な壁画だった。
　王子二人とその参謀、そして六人の仲間達が仲良さ気に描かれている。

　その中には魔人、天使、混血、アプラサスが当たり前に存在している。
　勿論ベリルの姿も当然の様に中央近くに描かれていた。

「これは……」
「今の事を忘れない為に、記念！！」
「まぁ気休めだがな」

　ベリルは二人の腕に飛びつく様にしがみついた。
「アレク……プラチナ……ありがとう……」

　何だか泣きそうな程の万感の想いを込めてそうつぶやいた。

「おお、ええ感じに仕上がっとるやん」
「ま、いーんじゃね？」
「はい、そうですね」
「綺麗です～」
「そうだな」

　ルビイを筆頭に部下達からも賞賛の声が上がる。
　ちなみにルビイ、ロード、カロール、プラム、ジルの順だ。

「まさか、こんな時が来るなんて思いもしませんでしたね」
「……そうだな」
　サフィルスとジェイドの二人も仲間達に囲まれて佇んでいた。

　アレクとプラチナから離れたベリルに、ジルが近寄って囁いた。
「マスター、大丈夫ですか」
「何がだい？」
「本当は〝あの方〟も入れたかったのではないかと」

　ベリルは少し微笑って、視線を向けた。

「……いいや、充分さ。僕を入れて貰えただけでもね――気遣い、感謝するよ、ジル」
「いいえ、それで少しでも貴方の気が楽になると言うのなら安い物です」

　ベリルは微かに笑って。
「一度結んだ想いは生きている――か。君ともそうなのかもね、ジル」
「は……ありがとうございます。――ついでと言っては何ですが」
「何だい？」

「天使と魔人の共存にもう少し協力なさっても宜しいのではないかと」
　それは遠回しに会議に出ろと言う事だった。

「やれやれ、君までお説教かい？　一応責任を持って見ているつもりなんだけどね」
「そうですか、それは失礼致しました」

　ジルが頭を下げる。
　ベリルは明るい調子で続ける。

「あの子達なら大丈夫だよ。僕の時の様な事にはならない。新しい世界の扉を開けてくれるさ――その為に僕達も在る訳だしね」
「はい、私もそう思います」

　ベリルが少し意外そうにジルの方を見る。

「おや、珍しく意見が合ったね。――だから見てる位で丁度良いんだよ」
「……そうですか」

　今度はジルは反論はしなかった。

「ああ、僕はそれが充分楽しいんだ――」
　ベリルは眼を細めて壁画を見上げた――。

※彼等が〝石〟を飲んだかどうかはご自由にご想像下さい。

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