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「封印……解けちまったみたいだな」
一歩遅かった事を否応なしに知った。
「じゃあ……ランは……」
御園生の言葉にオレは答える。
「情念に……取り憑かれてる」
「レイヤードさん……だいじょうぶ？」
ランは嫌な笑みを浮かべてオレたちの方を見た。
「遅かったな、情念はすでにわたしの中にある。おまえたちなどもう敵ではないわ。まずわたしの新しい力をお客様にお見せしなくてはな」
ランの腕の一振りで壁がガラガラと崩れた。
「か……片手で……あんなに……」
「化け物だ……」
思わず出たオレの呟きに瀬那が頷いた。
「ええ……。もう彼はわたしたちの知っている生き物ではありませんよ。かつて太陽神と闘った……神と同じ力を持った化け物です」
「わははははは！ 素晴らしい！ 素晴らしい力だ！ 神の力が沸きあがってくる！ 白い翼の王子など虫けら同然よ！」
ゴゴゴゴゴ……
地響きの様な音が響いた。
「ぐ……ッは……ッ…………な……に……！？」
急にランの様子がおかしくなった。
恐らく逆に『情念』に取り込まれそうになっているのだろう。
「ガハッ！ うう……ッ、う……う……あ……あああああああ
うああああああああああああああああああッ！」
「どうして……ラン……」
ふらふらとランに近づくレイヤードにいちはやく気づいた杏里が声を上げた。
「レイヤードさん！！」
レイヤードの姿がランに触れるとふっと消えた。
「！！ レイヤードがランに！」
「吸収……された……」
翔と櫂が驚きの表情を浮かべた。
「いや……むしろ『情念』に吸収されたのだろう……」
紫苑の言葉にオレはギッと歯を噛み締めた。
せっかくレイヤードを改心させたと言うのに。
「ちっくしょう！ ――翔、櫂、頼むぜ！」
「はい！」
翔と櫂は太陽神の力を召喚した。その力が攻撃するのではなく、負の『情念』を浄化するものである事を願って……
だけど、それは少し甘い考えだったようだ。
紫苑がランを見て叫ぶ。
「いかん！ 体内のエネルギーが暴発するぞ！ 逃げろ！ このままではみんな木っ端微塵だ！」
「レイヤードは！？」
翔の言葉に瀬那が答える。
「……ランとともに消滅するでしょう」
櫂がやりきれなさそうに言葉を発した。
「そんなっ！！」
「レイヤードさん……」
全員後ろ髪を引かれる思いで其の場を後にした。