ＣＡＳＥ．１．５ 家族と呼ぶ存在。（もの）（クレオ）
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〝家族〟が温かい存在だという事実が、
とても幸運なことだと気付くのは、
未だ遠い先の話――。
「なぁなぁ、クレオさんて美人だよなー」
本拠地で、シーナのいつもの話が始まった。
誰々が綺麗だとか、誰々は可愛いとか。
「あんまり邪魔するなよ、クレオは主戦力なんだから」
多少呆れながらそう言うと。
「なんだよ焼き餅か？ デュオン」
その言葉にデュオンはため息をついた。
「お前なぁ……。確かにどう見ても遊びな奴が、姉同然の相手ににちょっかい出してたらあまりいい気はしないけどな」
「あ、俺友達の彼女には手ぇ出さない主義だから」
「友人の姉妹には手を出す主義か？」
正直言うと、シーナを友人と呼んだ覚えはなかったのだが、そう横目で問うと。
「何か悪いことしてるか？」
と答えが返る。
「じゃあお前は例えばアイリーンにどう見ても遊びな奴がつきまとってても気にならないのか？」
今度はそう訊いてみる。
アイリーンとはシーナの母親だが、未だ三十二歳の若さだ。
「そんなの親父がぶった切っちまうよ」
「ふーん、なら俺なら大丈夫だな」
「へ？」
シーナは間の抜けた声を上げた。
デュオンは至って真面目な声で続ける。
「実は俺、年上の芯のしっかりした女性って好みなんだよ。今までシーナに悪いと思ってたから言わなかったけどさ。でもシーナが気にしないならいいよな」
そう言ってデュオンは席を立った。
「お、おいデュオン？」
止める間もなくデュオンは走り去ってしまった。
そして、シーナがようやく見付けた光景は。
デュオンとアイリーンが楽しげに談笑している場面だった。
デュオンがアイリーンに何かを渡している。
大きさから見てアクセサリーか何かだろうか？
二人の距離が近い。
「デュオン殿、何の話ですかな」
そこに現れたのはレパントだった。
「丁度良かった、耳貸して下さい」
デュオンは小声でレパントにシーナのことを手短に耳打ちした。
「そうでしたか、それでは私はこれで」
レパントはあっさりと踵を返した。
えーっウソだろ、親父がそのまま引き返すなんて！
シーナは心の中で叫んだ。
シーナの見ている前で、デュオンとアイリーンの仲良さげな談笑は続いている。
そのうちデュオンの手がアイリーンの肩にかかったりして……。
アイリーンの方もそれを気にする素振りもなく、楽しげな表情を見せて話している。
あ～～もう！
どうなってるかは解らないが、このまま黙って見てることも出来ない。家族のそういう場面は思った以上に居心地が悪かった。
「も～解ったよ！ 友達の姉妹にも手は出さねぇ！ これでいーだろ！？」
シーナは飛びだしてそう叫んだ。
「シーナ。解ってくれればいいんだよ。それと後始末は自分でしろよ？」
デュオンはにっこりと笑って釘を刺した。
「……解ったよ、しょうがねぇ」
こうして、シーナはリーダー達の姉妹には手を出さなくなったと言う……。