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Ｓｉｄｅ Ｂ ２８
行き止まり、か？
そこは少し広くなった部屋の様だった。
いくつか柱があるだけで、めぼしい物は見当たらない。周囲は壁ばかりだ。
だが――在る。
その部屋の奥の壁際に、うずくまる小さな人影を見付ける。
自分が知っているよりも、小さくて、幼い姿だったけれど。この面差しは……。
――ルックだ。
何故か風を感じる、その空間を横切り、
そっとルックの前に膝をつくと、その髪に手を伸ばした。
その手は、すり抜ける事無く彼に触れた。
これが、過去の記憶なのか、誰かの記憶なのか。
幻なのか、それとも現実に今、ここに在るのか。
単なる精神の夢なのか。
それでも、今、自分の意識はここにあって、まだ、奥があることが解る。
だから、進まなくては。
ルック、君の真実を、僕にも見せてくれないか？
幼い姿をそのまま抱え上げると、中央の壁に向かう。
――ルックが視線を向けている場所だ。
すると、壁の一部が、淡い発光と共に道を示した。
そのまま、薄い光の膜のよう になった壁を抜けて、その奥へと抜けた。
――ルック。
君の存在は、ずっと、僕が僕で在る為の、〝願い〟を支えてくれた。
自分でさえ、認められなかった願いを、認めてくれていた。
だから、本当は、君にだけは、こんな選択をして欲しくなかった。
これは自分勝手な願い。
解っている。
だけど――伝えたい。
君の存在は、君が思うよりずっと、僕達にとって重要なのだと。
君が在なければ、僕もリアンも、ここまで歩いて来られなかった。
――君が、僕が人で在る為の鍵だったんだ。
知っていたかな。
僕達は、互いに向き合う先は、違っていたけれど――
互いに向き合う先を、横目で見ているような位置に在たけど。
僕にとって、君は、〝願い〟とか〝目標〟とか、〝尊敬〟とか〝世界〟とかじゃ無くて――
選べなかった、もう一人の自分。
――〝可能性〟だったんだ。
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